un deux droit

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山崎豊子『大地の子』

コロナによる自粛モードが続く辛気くさい時期に、よりによってこんな辛気臭い作品を読んでいる。ここ数日は、毒を喰らわば皿まで、の心境で、徹底的に辛気臭く行こうと思っている。


山崎豊子の作品はどれを読んでも身悶えする。どれほど心を尽くし、言葉を尽くしても微塵も分かり合えず、歩み寄れない人というのが必ずいる。そして、その決して交わらない人に対しては、どこまでも非道な仕打ちができる。人間というのはかくも脆弱で怠惰で卑劣で冷酷で残虐なものなのか、ということをしつこくしつこく描いている。共感は錯覚で善意には打算がある。登場人物の誰にもハッピーエンドがない。悪い奴も一見多くの人を陥れ踏み台にして不当に人生を謳歌しているように見えるが、悪い奴なりの信念や思想に囚われてもがき苦しんでいる。そんな話を読んで何が楽しいのかと思うけれども、人間に対する多様な期待を抱かずに済むようになるという意味においては有用だ。さんまさんじゃないけれども、生きてるだけで丸儲けというか、五体満足で健康に問題なく不当な迫害も受けずに日常を全うできているだけでありがたいという気持ちにさせてくれる。

自らの境遇を肯定するためにとびきり不遇なエピソードに触れようとするのは健全な態度ではないのかもしれないけれど、マイナス思考の自分は、これよりまだマシ、という他人の不幸をガソリンにして自らに鞭を打っている。コロナからの現実逃避にどうぞ。