un deux droit

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第一章 エイプリルフール 5

「じゃー、とりあえず部屋いこか」 金髪に促され、棟の入口上部の壁に、緑色のポスターカラーで「C」と殴り書きされた通路へと誘われた。 「そういや名前まだやったな、俺、山田って言うやけど、寮ではおはぎって呼ばれてるからよろしくな。たいした意味はな…

第一章 エイプリルフール 4

私の淡い期待は脆くも崩れ去った。全寮放送を聞いて集まった顔ぶれは、先ほどの回で新入生を捕獲できなかった「はずれくじ」の面々だった。 前回の反省を踏まえたつもりなのか、それぞれの部屋は趣向を変えた一芸を披露してきたが、どれも付け焼き刃の生煮え…

第一章 エイプリルフール 3

今、目の前で起きた一連の出来事をうまく咀嚼できずに呆然としながら列の進むに任せていると、私の入寮説明の番が回ってきた。通された机には小柄で短髪の女性がボロボロのちゃんちゃんこを羽織って肩を丸めて座っていた。そのあからさまな座敷童子スタイル…

第一章 エイプリルフール 2

穏便な生活を確保したいというささやかな願いは、寮に足を踏み入れて30分も立たないうちに打ち砕かれた。玄関先でまごついていると、上級生らしき人物に声をかけられ、促されるままホールの二階へと連れていかれた。二階の廊下には、よそ行きの格好をして一…

第一章 エイプリルフール 1

人身売買 今、私の目の前には、ダンボール製のプラカードが二枚差し出されている。一つには「寮歌部屋」、もう一つには「スポーツ愛好会」という文字が殴り書きされている。そのプラカードを持つ男二人は、どちらも屈強な身体を誇らせながら、不気味なまでに…