un deux droit

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あなたがしてくれなくても、「他所にそれをもとめる」か?それとも「私はそれを受け入れる」か?

今シーズンのドラマは「あなたがしてくれなくても」を見ている。

30代共働き夫婦のセックスレスをテーマにした、なかなかに心の生傷をえぐってくる素敵な作品。

自分は妻から性交渉の「卒業」通達を明示的に受け取ったので、もう過ぎ去ったことではあるが、当事者の時期に見たら生々しくて視聴が苦しいかもしれない。
奈緒、永山瑛太、田中みな実、岩田剛典の全員の考えやふるまいそれぞれに「わかるわー」「ないわー」って思う。


以下、多分にネタバレ要素を含む。























奈緒演ずる【みち】が言う「愛されている感覚」をセックスから感じたい、という気持ちに共感しつつ、そのくせ夫に対する扱いがぞんざいだったり、周囲に自分の夫を下げて紹介する卑屈さが鼻についたり。

永山瑛太演ずる【陽一】が妻のがっついた感に醒めてしまう気持ちに共感しつつ、ずぼらと気まぐれが過ぎたり、ゲームばっかりやってるという自分の世界に閉じこもってます感にいら立ったり。妻と全く異なるタイプの女性に一瞬惹かれるも、一線を越えない律義さ=臆病さに我が身を重ねたり。

田中みな実演ずる【楓】の、仕事に忙殺されながらもできうる範囲でのパートナーへの心遣いやリスペクトを絶やさない姿勢に理性的な姿を感じつつ、やはり時折情緒不安定になり心無いことを言ったりやったりする無神経さに傷ついたり。

岩田剛典演ずる【誠】の、妻のキャリアを最大限サポートする献身さを美しいと思いつつ、決して責めずにずっと同じ優しい笑顔で、あまりの徹底した献身ぶりにむしろ責められているような無言の圧力を感じたり。

それぞれが足りないところと出過ぎたところがあり、その組み合わせがちぐはぐで、うまくかみ合わないもどかしさ・歯がゆさを存分に味わいながら視聴するストレスフルな夜。笑

セックスというのは、20代の若い頃は身体が性欲で満たされていたので、ある種何の苦労や葛藤もなく超えられたハードルだけど、30代になると体調も変化するし、性欲も落ち着く。日常生活で抱える悩み、人生の喜びや苦しみ、そしてパートナーに求める人間性もより複雑に多岐に亘っていく。夫婦のそれぞれが社会的動物として別々の荒波にもまれる中で、セックスというごくごく獣的な営みへと駆り立てられる波長がたまたま合うというのは本当に難しいことだと思う。

とりあえず今言えることは、このドラマを私が見ているということが妻に知られるととっても気まずい、ということ。Tverアプリで、小さいスマホ画面でひそかに楽しむしかないという別の辛さを感じている。