un deux droit

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家柄・ロンダリング

「大切にされていない」

妻が毎日のように呟き、私を苛ませる。



辛抱強く話を聞くと、一流のホストみたいなエスコートを私に期待している。


仕事でこれ以上稼がなくていいから、妻や子に対する関心を絶やさず、常にもてなせ、施せ、というのだ。

もちろん小汚いおっさんに世話されても気持ち悪いだけだから、洗練された振る舞いと身なりもプラスして要求される。豪奢な家によく教育された子ども、愛妻家でダンディな夫。そうした「成功した家庭」を演じてほしいのだ。私たちはそれだけのものを手に入れた。だからそれを手にするに値する高等な人間として振る舞わねばならない。素の人間性なんか出すな。みんな素はそんなもんだ。それを出さないで自分をコントロールしているだけだ。素のままでいたいなら下手な学歴なんかつけるな、家庭を持つな、家を建てるな。素でいいのは持たざる者の振る舞いで、手に入れてしまったものは素を手放さなければならない。どちらかしかないのだ、欲張りめ。妻の言い分をまとめるとこんな感じ。

つまり妻は、自分をもっとチヤホヤしろとかそういうわがままを言っているのではない。上流階級のような振る舞いをしろ、舐められるような隙を作るな。そういうことを言っているのだ。ブランド物で身を固める必要はないが、何気ない仕草に品よくあれ。つまりはノブレス・オブリージュのことを言っているのだなと理解。それなら腹落ちする。私はたまたまいいとこの大学に入っていいとこのお嫁さんを捕まえていいとこの土地を得ていい暮らしをしているのはたまたまなんだけど、あからさまに「たまたまです」みたいなプラプラした態度をするなということだ。「当然このような暮らしをする資格のある人間です」と常に立ち振る舞いで見せつけていけ。いいとこの出ではない自分にはちんぷんかんぷんだけれども、猿真似を頑張ることにする。