un deux droit

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非情になるにはまだ早い

本日は自分の主催する新規事業のプロジェクト会議。雇い主の好意的なバックアップをもらえないまま、自分達の読みへの信頼と、顧客の反応の良さだけを頼りに薄い勝ち筋を探る。
プロジェクトメンバーは6人で、全て私がリクルートした人間なのだが、そのうち、ある後輩の女性社員が目に見えて参加意欲を減退させていた。まず発言がほとんどない。会議中内職をしている様子。険のある表情。頻繁な中抜け。グループチャットの更新も途絶えた。明らかに関心が何か別のものに移ったという印象。元々有志のプロジェクトなので、私に業務命令権はない。なので参加したい時に参加したい熱量で参加すれば良い。興味がなくなれば去って構わない。なので、興味がないのに義理で居座られるのは扱いに困ってしまうのだ。

元々不穏な予兆はあった。メンタルで休職し、怪しげなオンラインサロンにハマり、そこで出会った男性と結婚を決め、田舎に引っ越すのだという。今は完全在宅勤務という雇用形態を会社に要求し続けている。対面至上主義のこの会社がそんなものを許すはずがないので遠くない将来退職するのだろうなと感じている。

どこからかけ違ってしまったのだろう。営業の次世代エースと目され、旧来の価値観に捉われない発想と提案力、そして人たらしの天性。現状に満足すること無く、環境に埋没することもなく、常に社外のコミュニティとの関係を絶やさず、新鮮な情報を仕入れてくる。何もかもが私と対照的で、この人なら自分のかけている要素を補ってくれる。そう感じてプロジェクトに誘い、気持ちの良い返事と潤いある眼差しで承諾してくれた。あの溌剌さよ何処。私のような汚泥なんかとつるんだせいで輝きを失ってしまったと思うのは自意識過剰だろうか。

新規事業を立ち上げるとき、初期メンバーでパフォーマンスの優れない脱落者が出ることはままある。既存の業務でのパフォーマンスがいかに優れていても、ゼロイチのときに求められる能力は根本的に異なるため、前評判ほどの実力を発揮しない人間がでてしまう。そのことは前もって予見することはできない。大概は当の本人ですら自身の実力を自負しているからこそ、新規事業に参画してこようとするのだから。その際に、情にほだされて脱落者に歩調を合わせてメンバーシップを保とうとすると、今度は事業そのものの推進力が落ち、共倒れになる。お友達サークルとしてワーキャーしたいのではなく、事業を本当に成功へと導きたいのなら、非情になるべきだ。ーーーということが読んだ新規事業立ち上げの参考書に書いてあった。本当かどうかは知らない。だってこれが初めての事業立ち上げ経験だからだ。たまたま読んだ本を鵜呑みにするのではなく、まずは本人に1on1で話を聞いてみようと思う。モチベーションの有無や、運営上の不満など。彼女の死んだ眼に再び明かりが灯るのをもう一度見てみたい。


今週のお題「復活してほしいもの」