un deux droit

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君は後輩に花を持たせられるか

仕事納め。例年ならやることなくて暇な時期なのだが、自分が始めた新規事業に関わる提案書や事例集を営業から求められて最終日まで忙しく過ごした。自分でも可笑しく感じるくらいクソ真面目にサラリーマンをやっている。普段顔を合わせることのない営業メンバーが、自分の預かり知らぬところでお客さんに提案を仕掛けてくれていることを知り、胸が熱くなる。人間関係がなくても、自分に地位がなくても、1年やり続ければ反応があるもんだな。10年前後歳の離れた後輩達の快い協力にただただ感謝する。

そんな折、同期の取締役から連絡がある。

「いま管理職会議中なんだけど、顧客向けの会報に掲載した特集記事について社長が感銘受けたって。これ書いてるのあんどうだろ?でも専務と経営企画部長がなんか自分の手柄っぽい感じで喋ってたぞ。」
そう言って、オンライン会議のチャットをスクショして送ってきた。見ると部長が「私の統括する編集メンバーの総力で書き上げました」、続いてその上席にあたる専務が「この記事で提唱した〇〇という概念は△△という方向で具現化したいと考えています」と意気込んでいた。清々しいほどのハイエナっぷりだ。
特集を企画したのも原稿を書いたのもすべて私で、部長は最終チェックしただけ。専務に至っては発行して初めて内容を確認したのだ。彼らが思考した成分は一滴も含まれていない。あんどう果汁100%の記事だ。それをよくもまたぬけぬけとデカイ面ができるものだ。私が管理職会議に参加資格がないのをいいことに。この厚かましさが出世する上で欠かせない素養なのだな。ホント勉強になります。

ご生憎さまだが、記事に書いた提言のその後の展開や企画はすでに計画が動いている。イベントはすでに集客を始めており、もう段取りもFIXしている。専務たちが今更息巻いたところで、実際のところは私がやることを指をくわえて見届けるしかないのだ。構想はすべて私の頭の中にあり、成果を強奪しようとて、私のアイディア再現する頭もなければゼロから考える頭もないのだから。

同期の取締役は「あんどうがしっかり評価されない現状はおかしいよ。来期は俺の構想しているスキームの上で力を発揮できるようにするから一緒に頑張ってこう」と告げた。こいつも味方のフリして勝ち馬に乗りたいだけのハイエナだった。魑魅魍魎とはこのことか。
 
庇護しているふりして自分の権勢のために利用しているだけだった厚かましい上司達を見て、我がふりも直さねばと思った。私も私で社内にブレーンを抱えている。才能はあるが周囲とそりが合わず冷や飯食いをしている者たちだ。こんなことを考えたんだけど、と持ちかけるといつでも自分のアイディアの次元を数段階高めてくれる存在だ。

私が声かけたから日の目を見ることになったのだという思いもあるが、それこそが専務たちの私を見る目ではないか。私があんどうに過分なチャンスを与えたのだから、その果実に対する取り分は当然主張してよいと思っているに違いない。自分はその愚を冒さぬよう、事業が成就した暁には、自分は黒子に徹し、ブレーン達を表舞台に立たせよう。みな、今日の私と同様に、「あんどうの成功は俺のおかげだ」と思っているはずなのだ。その誇りを本人が想う以上に高い価値として算定していると公言することで、以降の快い協力関係が期待できる。受ける賞賛を公正に分配できる力量を示したくてたまらないからこの新規事業は本気で成功してほしい。