un deux droit

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Humankind 希望の歴史

山口周さんがツイッターでおすすめしてたから買った本。

人類とは通説で理解されている特徴とは異なる性質を持っている、という話が実験結果ベースで紹介されている。この本に書かれていることは、下巻にあるラッセルの警句「自分が信じたいと思うものに惹かれてはならない」の一文に尽きる。上巻の「戦争に赴く兵士は、実際にどれだけの敵兵を殺害したのか」という研究結果は興味深いと思う。

人間は本来、平均的な自己認識よりも随分善良である、という話が上巻。では何が人間を邪悪にし、我々が他者に警戒心を常に抱きながら息苦しく暮らす羽目になっているのか、という話が下巻に書かれている。ためになるのは下巻の内容だが、上巻の内容で偏見をリセットしないと書かれていることの価値は理解できないという仕掛けになっている。
下巻にはピグマリオン効果とゴーレム効果についての記載がある。人は他者からの肯定的・否定的な評価を浴びせ続けられると、本当にその評価に沿った能力になるという現象。実際の事実とは無関係に天才と言われ続ければ天才になるし、バカと言われ続ければバカになる。根拠のない期待に事実が後追いしてくるのだ。この現象については知識としては知っていたが、自分がまさにそのような効果を受けたり与えたりする立場になってはじめて、しみじみと感じ入るものがあった。妻に駄目だしされまくってゴーレムになった私は、軽度のどもり、判断力の低下、決断する意欲の減退、決断したことへの自信の喪失など、かつての自分では考えられないほど衰弱している。他者評価は大人でも効果抜群だ。子どもならなおさら。妻は子どもにもきついダメ出しをするのでゴーレム効果が発動しているかもしれない。自分はこの本を読んだのだから実生活に活かし、ゴーレム効果に負けず、ピグマリオン効果を子どもにもたらさなければ。
今日は長女が次女の保育園登園グッズを自発的に用意してくれた。感心感心と思って保育園に着くと、給食で使うタオルが入ってなかった。「いや、手を出すなら全部やってよ、完遂できないなら手を出さないでくれよ」と憤慨したが、「ピグマリオン…ピグマリオン…」と唱え、手伝ってくれたことの感謝、不足物があったことの事実、仕事の完成形についての認識合わせ、挑戦してくれた事自体の肯定をした上で、明日もお願いね、と期待をかけると長女からは意欲的な表情を見て取ることができた。うんうん、最近は妻がゴーレム効果を所構わず発動させるから自分も同じやり口になっていたなと反省。人格否定は楽だし、なんなら快楽ホルモンが分泌されるのかもしれんけど、周囲はどんどんダメダメになっていき、自分のフラストレーションを溜めていくだけ。賢く生きないと。

それにしても本は何でもかんでも乱読すればよいというものでもなく、生活実感や経験があって初めて理解が進むこともある。出会うタイミングって大事だな。