un deux droit

このブログには説明が書かれていません。

松本若菜は全ての俳優にとって名助演

「西園寺さんは家事をしない」が終わってしまった。

正直に言って、見る前は期待していなかった。
なぜなら、この手のドラマはたくさん見てきたから。
しかし私は松本若菜推しなので、松本若菜の演技をたっぷり楽しむことさえ叶うならば、その他のキャストや脚本がイマイチでも良しとしようと思っていた。

その見通しは脆くも崩れ去った。

まず、北村北斗と倉田瑛茉演ずる楠見親子がとにかく愛らしい。松本若菜目当てで見始めたはずなのに、楠見親子から目が離せない。松本若菜の演技が素晴らしく、相変わらず美しさがダダ漏れなのだが、それでも楠見親子に目を奪われる。さらに、恋敵として途中から登場した津田健次郎、西園寺さんの旧友役の野呂佳代など、サイドを固める役者もバシバシハマっている。キャラが立っている。複雑な人間の内面が余す所なく表現されている。

松本若菜目当ての視聴だったはずなのに、松本若菜を途中からちゃんと追えていない自分に気がついた。この脚本、やりおる。松本若菜がむしろユーティリティプレイヤーかつスーパーサブとして、全登場人物にとっての引き立て役として成立している。松本若菜演ずる西園寺一妃には、むしろ味がない。直情的で、天真爛漫で、思考回路に複雑さがない。仕事はでき、周囲からもチヤホヤされるが、何故か結婚には行き遅れるタイプ。望みが高いとか、実は性格が悪いとかいう原因がないからこそ余計ラビリンス。どこの会社にも一人や二人いるよねこういう人。

松本若菜本人にも、実は味がないのかもしれない。しかし、それ故に周囲の味をうまく引き出すことができている。私の目にはそう映った。あなたは昆布か。彼女を介することで、登場人物ひとりひとりの曖昧な心の機微を、しっかり噛みしめることができる。主演級の華を持っていながら、本人が中心で目立つのではなく、本人がスポットライトとなり、周囲の役者を魅力的に照らしている。不思議な俳優だと思う。それ故に使い方がとっても難しい。スポットライトにスポットライトを当てても仕方がない。監督や脚本が、登場人物一人一人にしっかり意味を持たせなければならない。捨て役を作れない。そんな印象を持つ作品だった。10がつからも主演作品が続くが、次の監督と脚本が、彼女をどう料理するのか楽しみだ。


ちなみに、肝心のドラマのシナリオは、最終話で高畑淳子が全て持っていきました。セリフ一語一語の殺傷能力が高すぎて、今の自分の置かれた状況に刺さりすぎて、目と鼻から変な汁出た