un deux droit

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僕はメタモン

私は比較的どんなことでも、やらないでほしいと乞われることは、辞めたり諦めたり差し控えたりすることがどきる。

酒を飲むなとか残業するなとか携帯ばっか見るなとか、およそ男性が妻に言われるようなことは従順に協力してきた。その挙句の果てが育休(仕事すんな)だし、転勤するな、転職するな、も受け入れてきた。

ただ、それが発動するのは、あくまで相手の態度が「乞う」という礼儀を尽くしたときであり、その礼儀もなく、ただ頭ごなしに、私の口頭を諌めるような扱いを受けると腹を立ててしまう。

今日も妻が私の相槌の一つについて気に入らなかったようで、「そのような表現は嫌いだ」「自分の言ったことを自分の言っていない言葉に変換されるのは不愉快だ」という趣旨のダメ出しをしてきた。その言い方や相槌を好まないのは妻の方で、その使用を私に禁じたいなら、「申し訳ないけれど、一般的には問題ない言い回しなのかもだけも、私にとって不愉快な表現だから、その言い方はやめて」とお願いをしてくるべきだと思っている。

しかし妻は、「私にそれをやめるようお願いはしたくないし、したつもりもない。あなたには不快だという意思表示をしただけだ。それを聞いてあなたがそれを受け入れるかはあなたの自由だし責任だ。あなたがあなたの表現を辞めたり変えたりするのはあくまであなたの自発的な判断であるべきだ。だから私は頭を下げない」と言い捨てる。

「でも私がそれをやめなかったら関係が破綻するんでしょ」
「そうよ」
「じゃあこの生活の維持を盾に、強請ってるのと一緒でしょ」
「生活をやめる自由も、私の苦情を受け入れて生活を続行する自由もあなた側にあるから、強請ってはいないわ」
「それは自由とは言わない。私が失いたくないものを人質にして、私が納得しないことについて言うことを聞かせようとしているだけだ。」
「失いたくない、でも苦情を受け入れたくもない、はわがままよ」
「そっちがわがままだろ。そもそも受け入れないと言ってない。ただあなたの苦情の趣旨は世間一般で控えるべきと共通認識のあるようなマナーを逸脱した、ごく個人的な好みの範疇だと認めるんだろ?だったらその特殊な希望に沿う私の苦痛への配慮として、下手に出てお願いするという態度で交渉してくるべきだと言ってるんだ。」
「なんでそんな屈辱的な態度を取らなきゃならないのよ」
「要望が特殊であればあるほど、それに応じる側の負担が大きいのだから、それだけ深く頭を下げなければ相手が快く応じるわけ無いだろう。二人の関係性に高低があるのではなく、要望の難度によって相手への伝え方が変わるってことがそんなに理解できない?」
「私の主観では特殊だと思わないし、そもそも社会一般と照らし合わせる必要もない。だいたい家族なんてごく私的な要望しかないに決まってるじゃないの」
「もちろんそうだよ。だけどだからといって、どんなぞんざいな言い方をされても丸呑みしなければならないというのは違う。親しき中にも礼儀ありだよ」
「私はいかなる場面であっても従属的だと思う程度は取りたくないの」
「いや従属とかでなくて人にものを頼むときの作法の話であって」
「だから頼んでないって言ってるじゃない」
「あなたの要望に応じなくてもなんのリスクもないニュートラルな状態だったらね。人質取って判断迫ってる時点で、『頼んでない』って強弁するのは流石に屁理屈だよ」
「だからあなたには選択の自由が」

以下無限ループ。



妻いわく、私みたいに自分の筋を曲げて人に合わせることができる人は世の中にほとんどいないのだそうだ。だから妻が私に頭を下げられないのは当然で、どうして自分の筋を曲げて私に頭を下げられないんだと憤慨するのはお門違いだと。自分を大切にしなさい。それが最後の結論だった。人の望む姿に変身できるが、自分自身にはなんのアイデンティティもない存在。それがメタモン。メタモンでない人には妻の話がよく理解できるようなのですが、メタモンでない皆さんはどうお感じになるでしょうか。