un deux droit

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けんけんがくがく

誤用だとわかっていながら、思わず口をついて出てしまう単語というのがいくつかある。

その中でも随分手強いなと思うのが「けんけんがくがく」である。

この、言えるけど書けない(しかも間違っている)四字熟語を使って表したいことは「膝を突き合わせて活発に議論する」という状態だ。

どこで間違って覚えたのか知らないが「けんけんがくがく」という音の響きが、腹蔵なく議論している様にしっくりきてしまったようだ。こういう四字熟語は無いのだと気をつけていても、不意にトークが盛り上がった時に、「まぁそこは、けんけんがくがくで行きましょう」とか言ってしまうのだ。

「けんけんがくがく」の登場頻度は年に1、2回程度。これくらい頻度が少ないと意識して修正するのも難しい。そのレアなケースが今日、顧客との会話で出てしまった。

顧客は2人いたのだが、意味は通じたようでリアクションに不自然なところはなかった。そもそもこの四字熟語を知らないか、誤用とわかって本人も使っていて意味が通じた可能性もある。しかし、正しい言い方を知っていて「気づかないフリ」をしてくれた可能性も否定できない。そんなことが気になってしばらく商談に集中できなかった。ああ、なんでこんな余計な言い回しを選んでしまったのだろうか。

それにしても、「けんけんがくがく」では無いことはわかっているのだが、何が正しかったっけというのがいつまで経っても覚えられない。今日もうんざりしながらググる。ただしくは「喧々囂々(けんけんごうごう)」もしくは「侃々諤々(かんかんがくがく)」のどちらか。やかましいだけで収拾がつかないのが前者。遠慮せず率直に考えを言い合うのが後者。

「囂々」は非難囂々(ひなんごうごう)なんて言い方も良くするくらいだから「がくがく」とは読めないんだよ、冷静に考えて。でも漢字の意味がわからない「侃々」より「喧嘩」「喧伝」など馴染みのある「喧々」の方が口に馴染むんだよなぁ。「かんかんがくがく」と正しく使っても「えっ?(まちがった?)」と変な空気になりそう。「けんけんごうごう」も全く耳馴染みがなくて会話が停止しそう。第一、言いたい意味と違うし。

おそらく「けんけんがくがく」はオノマトペなんだよね、私にとって。「ワイワイガヤガヤ」と同じ。だから、いくら正しい熟語が「かんかんがくがく」でも、自分にとってノリが悪く感じるので使いたくない。というわけでお蔵入り単語です。

蛇足だけど、お蔵入り単語第一号は「早急(さっきゅう)」。メールでは使うけど、口頭では避けている。「さっきゅう」って口頭で言うと、知らない人は「へ?」ってなるし、知ってる人も「きどりやがって」という印象になる。「そうきゅう」の方が完全に覇権を握っていてビジネスシーンでもみんなで誤用しまくりなんだけど、間違っていると知っていてわざんざ間違った読みで発音するのは抵抗があるのでお蔵入りした。でもこれも油断するとつい「そうきゅうに対応します」とか言ってしまうのでクセが強い。

お蔵入り単語第二号は「時期尚早(じきしょうそう)」。脳内では「しょうそう」と言っているつもりだけど、多分口からは「そうしょう」と言っている気がする。というか他人が言ってても正確にどっちで言ったのか聞き取れない。これはこの単語が悪い。

そう言えば今日も、「アミニズム」と入力したら、正しくは「アニミズム」だったということに気づいた。「コミニュケーション」みたいなことだな。日本語話者には発音しにくい/聞き取りにくい音の羅列がいくつかあるようだ。こういう隙間に落ちる単語が気になって仕方がない、生きにくい私。