un deux droit

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SNSに書き込めば事実であってもヘイトになる

つるの氏がパクチー盗まれたことをツイッターに書き込んで炎上してる件。

つるの氏の表現の巧拙は一旦脇に置いて、つるの氏の言ってることが仮に全て事実だとしてもなおヘイトスピーチになってしまうのだ、ということを本人と擁護者は受け入れなければならないと思う。

パクチー盗まれたのが許せない、で話は完結している。犯人の国籍がどこであろうと、怒りの度合いは同じであるべき事案だ。だからこの件で犯人の国籍についての憶測情報は不要なのだ。なのにあえてそれを付加したと言うことは、「許せない」の要素にわざわざ国籍を加えているわけだから、外人に盗まれたのが日本人に盗まれたのよりムカつく、という意味に捉える人を飛躍だ、左翼のこじつけだというのはちょっと無理がある。つるの氏には、逆にどう受け取ってもらうべきだと考えているのか示してみてほしいもんだ。
擁護者に対しても憤りを感じている。むしろそちらの方が強いかもしれない。また、女に盗まれたムカつく、大男に盗まれたムカつくだったら本筋の主張と関係なくても違和感ないくせに、国籍のことになったら途端にピリピリするのは結局当事者側の過剰反応だろ、むしろそれを意識してる方が差別意識持ってるだろという意見もあるが、それも論外。「わたしたち」の中にも内在する属性かそうでないかによってことのナイーブさは全く違うことくらい分かってるくせに、あえて論点をずらす卑怯者だ。「わたしたち」の中に内在しない、と考えられていた属性に対する苛烈な差別の歴史を考えれば慎重に扱うべき問題なことは自明だ。LGBTなんてもう当たり前なんだからみんなカミングアウトすべきだろ?っていうくらい無神経である。

冒頭に戻ると、つるの氏に強烈な差別意識があるとは感じないものの、異質なものと自分が捉えている存在に対する原始的な恐怖心、防衛心が読み解ける。家族内やご近所など空間を共有する当事者間の内輪の会話としてはヘイトとまでは言われることはない内容だ。しかし背景や文脈が共有されていないSNS空間で同じ内容を発信すれば、読み手には与えられた限定的なキーワードを組み立てて背景や文脈を組み立てるしかなくなる。

「工場で働いている外国人は野菜を盗むようなやつだから、お前の近所にもいたら気を付けろ」

と、直接的に言ってはなくとも、受け手にはそんなメッセージがいとも簡単に組み立てられる。それは受け手が元々持っている差別意識の問題だろ?発信者はなんの責任もない、とつるの氏は嘯くだろうか。いや問題大有りだよ。だいたいの人間は弱くて、差別意識を内在してんだ。もちろんその差別には根拠がないから、知識や実際の経験を蓄えて偏見を克服しようと頑張ってるんだよ。そうやって積み上げたものを無自覚に崩してんじゃねーよ、って話。

ついでに言うと、差別なくしましょうって言っている人たち、もとから差別意識なんてありませんでしたみたいな聖人面している気がするけど、それもいかがなものかなと思う。その優等生な態度がヘイトの問題を息苦しくしている要因の一つでもある。
少なくとも私は同じ日本に生まれ育った妻とめちゃくちゃ分かり合えないので、誰ともある程度は打ち解けられて、でもホントのところは何もわからない、という諦めの境地に至っている。人類皆兄弟だし、同時に全くの赤の他人だ。