un deux droit

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意識調査の使い道

仕事上の今期の山場だった意識調査の納品が本日終了。下半期は毎年のことながら惰性。力抜けた感じでフラフラ営業していると、またとんでもなく大きな仕事が舞い込んでくるので来年の売り上げは心配していない。
そんでもって今日は報告会だったのだが、調査結果から戦略を打ち立てるワークショップの最中に、先方のチームに先月異動してきた新参者に呼び出され、痛烈なダメ出しを喰らった。
「この結果からじゃ何も読み解けないんだけど」
「部署毎の分析結果まで書いてもらうのが筋じゃないの」
「この結果から戦略を打てと言われてもみんな困っている」
と言いたい放題である。

「今まで御社にこんな程度の調査を依頼して金を取られていたのか」
「いえ、今回初めて携わらせていただきました。」
「あ、そうなの。でもこの設問は御社が作ったんでしょ。センスないよ。」
「いえ、この設問は貴社が昨年まで取られていた独自設問を土台としています。A様(クレーマーの上司)と5月から月一のペースで目的のすり合わせ、仮設設定、設問設計、とお打ち合わせを重ねまして今回の設問を作り上げました。当社のパッケージ設問は一切入っておりません。」
「あー、そういうこと。でもやっぱり職場毎の分析ないと困るよ。」
「その点についてはA様からも元々ご要望をいただいておりましたが、予算が膨大になること、実査から納品まで十分な時間が確保できないこと、職場毎の人数が少なく統計的な見地から客観的にお伝えできる分析が難しいこと、大半の設問の内容ができたかできてないかの実態調査となっており、その原因は外部からは知り得ないこと、など複数の観点から見送りとなりました。」
「…とにかく、来年は設計から私が入らせてもらうからそのつもりで。頼むよ。」

納品までの経緯を何一つ確認せぬまま、よくぞそんな大口を叩けたもんだ。あんたが思いつきそうなことは全部潰してこうなってるんだよ。憮然とした態度を隠さない背中に心の中で中指を立てながらワークに戻った。
案の定、クレーマーの懸念は杞憂に終わり、最初は結果の読み込みと意味づけに時間がかかり沈黙が続いていた職場代表者たちも、しだいに互いの職場の数値の載ったカルテを突き合わせて「実はうちはこんな事情があって…」「この結果はあの施策がうまくはまったからだろうな」と、侃侃諤諤やり始めた。そこでは到底私の知り得ない現場情報が飛び交っていた。これだよ、私とAさんが狙っていた光景は。調査は所詮、暗黙知の呼び水に過ぎない。ここで交換される組織運営ノウハウが現場で生かされればそれで良いのだ。素人が数字だけをかじってわかった気になって適当な分析をぶち上げたところで、かえってその内容に引き摺られて各々の洞察力を弱めてしまうだけなのだ。
コンサルは手っ取り早く答えを教えてくれる人、と思われている向きもあるが、組織のパフォーマンスが最も活性化する触媒を探り当て、それを一滴だけ落とし込むという役割の果たし方があると思っている。あとは自然に起こる化学反応にお任せ。元々ある地力がしっかり機能し始めれば、あとは余計な手出しは無用。しめしめとほくそ笑み私に目配せをするAさんと、Aさんの隣でふんぞりかえって苦虫を噛み潰した表情を浮かべるクレーマーを交互に見比べて、大仕事の余韻をしばし味わった。