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映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』感想

映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』を見てきた。

yutori-movie.jp

ドラマに熱狂してからもう7年も経つことに驚きを隠せないが、再びあの「ゆとり」ワールドを堪能できる日が来たことをありがたく思う。

7年前このドラマを見ようと思ったのは、柳楽優弥が出演していたからだった。『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭男優賞を取ってから忽然と姿を消したと思っていた俳優が突如として表舞台に帰ってきた。そんな印象を受けた。当時はまだ『誰も知らない』を鑑賞したことがなく、名前と顔だけしか知らない俳優だったので、どんな演技をするのか興味本位で一度見てみようと思ったのだ。

そしたらまたキャラクターのドギツイこと。良い意味で「思ってたんと違う」かった。いかがわしい店の客引きを演ずる彼の、あまりにも自然ないかがわしさに度肝を抜かれた。こんなアクの強い俳優だったのか!と感動を覚えた。(その後彼が番宣で出てたバラエティで、はにかみながら朴訥と喋っているのを見て、いや演技のときの憑依すごすぎだろと2度目の度肝を抜かれた。)

柳楽優弥目当てで見たドラマだったのだが、他の俳優もアクの強さが尋常じゃなかった。当時、ほとんどドラマを見なかった私は、本当にたまたま、安藤サクラも、松坂桃李も、吉岡里帆も、吉田鋼太郎も、太賀も、俳優としての演技が初見だったのだ。その全員のキャラクターのアクの強さと言ったらもう。申し訳ないけど主演の岡田将生がとにかく薄くて、むしろその薄さゆえに中和剤として抜擢されたのではという悪意を感じるキャスティングだった。ついでに言うとクドカン監督作品を見るのも初めてだったので、なるほどコレはチヤホヤされるわけだと唸った。

このドラマのあと、ようやく『誰も知らない』を見て脳天かち割られる衝撃を受けることができたし、安藤サクラ目当てで『万引き家族』『ブラッシュアップライフ』という名作に出会えたし、松坂桃李見たさに『エイプリルフールズ』に手を出して、後の戸田恵梨香との結婚で悶絶する経験ができた。私個人にとって映像作品視聴の道筋を立てた偉大なる作品なのだ。(岡田将生の作品だけその後何も見ていないのもこの作品の影響と言える笑)

それでようやく本題の新作映画だ。7年間の時を経て、それぞれが俳優としての地位を確立した今となっては豪華すぎるキャスティングとなった本作品。既存キャラ全員の円熟味が増して、より濃厚になった掛け合いが続く中に、ダメ押しでぶち込まれたのが木南晴夏。いやいや、もう濃すぎてもう液体部分ないです。ほぼ固形です。特濃で過積載な既存キャスト陣の中にあって、異彩を放てる木南晴夏は化物ですよ。男性陣が脇役に回ってしまうくらい抜群の存在感を発揮していた。木南晴夏はもうすぐ放映される『セクシー田中さん』でもわかるように、自分を「不美人」にも「美人」にも見せられる恐ろしい俳優だ。好みの顔じゃないはずなのに、なぜか気になって目が離せなくなる。そしていつの間にか好きになってる。玉木宏の好みは玄人だ。

肝心の中身は完全にドラマを穴が開くほど見た人向けで、映画で初見というのは全くおすすめしない。逆にドラマを親しんだ人は絶対見に行くべき作品。7年分溜め込んだ社会風刺、人生の閉塞感に対する行き場のない悶え、そして後半畳み掛けられる名言のシャワー。映画館で私も他の客も周囲に聞こえるくらいの音量で笑い声を上げてしまうというのは初めての経験だったし、目頭の熱くなるシーンも数多くあった。平日のど真ん中に年甲斐もなく感情を揺さぶられてしまった。期待を遥かに上回る視聴体験でした。ご馳走様でした。