un deux droit

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在宅勤務を目の敵にする人間を目の敵にする

今日は会社のワークルール検討委員会に従業員側の代表として出てきた。会社はこんなご時世で、業務の性質上どこをどう見ても必須とは思えないにも拘らず、在宅勤務を原則撤廃し、在宅勤務希望者の給与を下げようと画策している。かくしてこの委員会は、馬鹿に対して如何にあなたが馬鹿であるかを馬鹿に分かるように説明を尽くすという不毛な作業となっている。

今日は人事の課長が出し抜けにこんな発言をした。「在宅で完結できる業務だから出社しない、という人は出世を諦めるということになるけど本当にいいのかしら。」真意をただすと、なにか新たな仕事をふろうと思ったときに人派普段接点のある人に声をかける。在宅の人はその恩恵を受けにくい。長期的に見れば新たな能力拡張機会に開きができ、結果的に処遇に差が生まれるのだそうだ。

私は真正面から反発した。「なるほど人間が単純接触効果で気のおけない人間を重用しがちだから目につくところにいたほうがおこぼれが貰いやすいという話は一般論としてよく理解しました。しかしそれは一従業員が個人的な社内政治の戦略として採用する分には自由ですが、組織運営の建前としては接点の多寡に拘らず、従業員の資質によって登用しようと志向し続けるべきじゃないですか。何開き直ってるんすか。男は色仕掛けに弱いからセクシーな服で出社しておじさんに気に入られようと女性が一個人として選択するのは自由ですが、セクシーな格好してれば出世が早いのになんでそんな地味な格好してんだろねって人事が言ったらアウトですよね。話の構図わかります?」

セクハラ親父と同定されて色をなした課長は更に墓穴を掘る。「いやそういうことではなくて、ただ作業しているだけじゃその仕事内容しかわからないじゃん。人となりとかどんなことに関心があるのかとかそういうことの雑談から管理者がそう言えばあいつあんなこと言ってたなってチャンスくれるなんてことはあるでしょ、そういうのを軽視しないほうがいいってことが言いたいの」

私はなおも正面からストレートパンチをかます。
「だからそういうことで誰を登用するかを決めるような管理職は失格だと言っているんです。もっと最適な人がいるのに、普段対面コミュニケーションをする機会がないからといって別の人にアサインして機会損失することがあれば、その責任はアピールしなかった個人ではなく、積極的に人材発掘する労を惜しんだ管理職にあるに決まってるじゃないすか。あとね、仕事はどちらにせよ一旦誰かに任せてやらせるしかないんです。普段よく見てる人だから成功率が高まるわけでもないし、普段をよく知らないから成功率が下がるわけでもありません。結局ギャンブルなんですよ。だから大事なのは業務と個人がミスマッチだった場合すみやかに撤退することです。その時に本人の実力以外の親密感などを動機とした登用の場合、撤退の判断が遅れて傷を大きくします。そうやって目が曇るので声のかけやすさで人をアサインするのは悪手です。」

私が言葉のフルボッコを人事課長に浴びせていると、人事部長が課長をかばうようにこんなことを言った。「でもさ、やっぱり言いにくいこととか、内密に話進めたいこともあるじゃん。社長に話すときも内容によってはこれは直接会って話したほうがいい、っていうケース結構あると思うんだよね。」

今度は部長を血祭りにあげる。
「そもそも聞かれてマズイような話をしないでください。どんな話だって誰が聞いても構わないような話し方を目指してください。そういうことばっかりやってるから密室で物事が決まってるような疎外感を従業員に植え付けるんですよ。膝つき合わせてコソコソするのが性に合っていても、それはするべきでないのです。
ライフ・シフトだったかな、こんなエピソードがありますよ。ある会社で社長をやってる男性が女性従業員を飲みに誘うと良からぬ関係を疑われるから飲みに行くのは男性だけにした。そうすると飲みに行ける男性だけが重用されていると疑われるから結局従業員と飲みに行くこと自体を諦め、従業員とオフサイトで交流するのはランチだけにした。たしかにこれは不便だし味気ないが、その不便さ、味気なさを感受してでも男女の扱いの差がないことを信頼してもらえる便益のほうが遥かに大きい。責任ある人間は孤独にならなければならない」、と。

どちらも戦闘不能の姿勢でうなだれているので、止めの一撃を放った。
「そもそもそんな周囲をうろついている、という理由でアサインされるような事業にろくなものはないです。だってそんな決めかたしてるってことは究極誰でも良かったんですよね。そんな暇人コンテストみたいな業務の割り振りはこっちから願い下げです。」これに懲りて歪んだ価値観を矯正してくれると良いのだが。