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オッサンの支配欲はもういいぜ〜【書評】黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』

戦争が始まった時に読み始めて、読み終わるまでにずいぶん時間がかかってしまったが、戦争はまだ終わっていなかった。

ロシアの一連の侵略行為は論外としても、そもそもなぜこんなことが起きているのか?そもそもウクライナとは何なのか?そんなことを冷静に考えてみたくなった。情けなくなるほどウクライナの歴史について無知だった。

そこで手に取ったのが上記の本。初版は20年前だが、全く問題なく読み進められた。大国の栄枯盛衰を取り扱う書物はたくさんあるが、特定の土地に焦点を絞り、歴史的に定点観測した書物を読むのは新鮮だった。そうやって書かねばならないほどウクライナという土地、民族はあまりにも多くの大国に蹂躙され、翻弄され続けてきた。むしろよくぞこの歴史の風雪に耐え抜いてきたな、と思うほどだ。肥沃な大地を持ち、大国間の交差点に位置取っていることがかえって、独立勢力として地位を確立することを阻んだ。DICE WARSでも地図の中央から勝利を収めることは困難である。

www.gamedesign.jp

さて、元道民としてどうしても気になってしまうのが、北海道は大丈夫なのか、という視点。ちょうど北海道新聞にこんな記事があった。

www.hokkaido-np.co.jp

これを読むと、ロシア軍の余力的にも、動機的にも北海道への侵攻はなさそう。一口に戦争をすると言っても、膨大な人数の戦闘員と兵器を投入する必要がある。ロシアとて全方位的に喧嘩を売れるほど潤沢に資源があるわけではないという当たり前の事実を冷静に理解し、漠然とした不安感を拭うことができた。

以下は、資源の有限性という観点から、戦争という手段がその良し悪しに関係なく選択できなくなる日が近い、という示唆をくれるツイートの束。

テーマは農業だが、人類の全ての営みに通底する制約。「他国の領土を強引に征服し、そこから資源を収奪するための経路を整備する」ために必要な資源がまず確保できなくなる日が来る。むしろ、ロシアのこの度の宣戦は、エネルギー資源枯渇に備えた最終決戦のつもりなのかもしれない。

と、ここまで素人考えで妄想を膨らませてから、web情報を集めると、自分の浅知恵と符合する記事を発見。
toyokeizai.net

民族問題だとか、NATOだとかの話よりスッキリわかりやすい。ロシアの商売上、ウクライナの存在が邪魔くさいということ。
この観点で情報収集するとザクザク出てくる。以下は、なぜロシアがここまで無謀な行動に出るのかの理由の一つ。お尻に火がついている。売り物が遠からず枯渇する。稼げる時に稼いでおかないと、という感じ。
ieei.or.jp

以下は、ロシアの侵攻がドネツク・ルガンスク州に集中している理由。先のクリミア侵攻は不凍湖が欲しいとかそういう牧歌的な話じゃなくてガス油田の存在が大きい。最初はウクライナを通過するパイプラインを全て占領して、EUへの供給を直接コントロールしたいのかなと思ったのだが、ウクライナを経由するパイプラインはウクライナ全域に広がっているため現実的でない。それよりも、新たな商売敵の出現を脅威に感じて先手で封じ込めたという印象。
www.rieti.go.jp


余談だけど以下は、エネファーム導入検討時に見た資料。ガスの方が電力より輸送のロスが少ない、という話。ガスパイプラインの敷設、確保に各国が血眼になるのもわかる。

アメリカは有数の天然ガス産出国だが、肝心のお客様へガスをお届けするための経路がなく、液化して海上輸送するしかない。エネルギーを運ぶのにエネルギーがいる。当然コストも嵩む。EUはエネルギー供給でロシアに首根っこを掴まれている状態から早く脱却しなければならなかったが、うまく足並みが揃わない。ロシアとしては当面の対欧州へのエネルギー供給について生殺与奪の権利を得られる最後の勝機と見たのかもしれない。ここでウクライナさえ抑えてしまえば、その後のどんな非難もお構いなし。つべこべ言うならガス止めるぞ、とストロングスタイル一本槍を貫ける。今までも欧州にはそのような姿勢でいたかったのだが、ロシアが供給を止めるとそれまでにらウクライナがこっそり蓄蔵しておいたガスを売るなど肩透かしに終わっていた。ガスを止めて言うことを聞かせたいが、その間「上がり」も止まる。我慢比べではロシアの方が先に参ったとなってしまう。それが面白くなかったのだろう。


と、ここまで書いて、なんて幼稚な話なのだろうと思った。(自分の発想が幼稚な可能性もある。そっちの方を願う。)周りに好かれる努力もしたくなく、自分の言うことを強引に聞かせたい。そのためのデスノートが欲しい。ただそれだけ。プーチンは69歳。どれだけ長く見積もっても現役でいられるのはせいぜいあと10年。その間だけでもいい気分でいたいというだけの話。中間あたりで書いたけど、そもそもエネルギーそのものが遠からず枯渇(しないまでも採掘コストが爆上がり)するっていう中長期の見通しが立っている中で、人類は近視眼的な小競り合いしている場合じゃない。ここでロシアがいっとき覇権を握ったからといってそれがなんだというのか。エネルギーの浪費がアホらしいので、もう無闇に人や資源の移動は控えて、地産地消でそれぞれ小さくまとまって、人口はできるだけ抑えて、交流はweb通信でやりましょう、と、しっぽりと内向きに暮らしていくのがよろしいのではと思いますが。覇権争いをして勝利したとて、得られる利益より統治するコストの方が上回る。ビジネスとして割に合わない、とソロバンを弾いていただきたい。