un deux droit

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魂を売らせようと躍起になる愚かな支配者

昨日、支店に社長が来た。

社長はここ数年、年度末になると全社員と面談を下回っている。

通常ルートでは見落としてしまう個人の頑張りを救い上げるのが目的らしいが、それは評価制度と上司の存在否定に他ならないのでは、という野暮なツッコミはもはや誰もしないらしい。威張るしかやることのなくなったおじさんの悪趣味だ。うんざりしながら私は面談に臨んだ。

今期の業績と要因、来期に向けた改善点と具体的な施策を淡々と述べた後、社長は開口一番、内容そっちのけでこう言った。

「育休から復帰して大変だったか?」

私自身その事実を忘れていたので、別に特に変わったことはないですね、二回目なんで、と素っ気なく返すと、

「同期のAやBと比べて焦ったりしていないか?」

と追及を深めてきた。

AとBは同期の出世頭で既に役員と管理職に登り詰めている。彼らのプライベートとプライドを犠牲にした生活の割に肩書きだけで大した給料をもらっていないことを良く知っている身としては、別に彼らのことを羨ましいとも何とも思っていなかった。なので何を言ったらいいのかもわからず、

「まぁ、環境が違うんで比較のしようがないですからね。与えられた環境で自分にできることをやるしかないと思っています。」と呆けた顔でしおらしく答えておいた。社長はその回答にあまり満足しなかった様子を浮かべた。

正直なところ、この一年は家事と子育てが忙しすぎて仕事はまともに身が入っていない。営業の身分を最大限に生かし、就業時間などろくに守らず遅出中抜け早帰りとやりたい放題やらせてもらっている。無駄に目立つ地位にいて、日々の仕事っぷりを真面目に監視されたら参ってしまう。営業はノルマさえ達成しておればそうそう文句は言われないものだ。それを評価する上司が毎年目標未達なら尚更なこと。ありがとう部長ずっとポンコツでいてください。こんな最低限以下のコミットメントでも、安いながらも非正規雇用と比べれば十分な給料を自動で毎月振り込んでいただけるので感謝しかないのだ。

それにしても社長は私に何を言わせたかったのだろう。寝る前に面談を回想するとあまりにも単純な事実に気づいた。社長を権威ある人として認識することをしばらく忘れていたからすっかり見落としていたが、同期のAとBを出世させ、私をヒラに縛り付けているのは目の前のおっさん(社長)だった。つまり社長は、わたしが彼の人事権行使でプライドが傷ついていて、なんとか昇格してもらおうと尻尾を振る様が見たかったのだ。そのために彼はわたしの人格を掌握したかった。けれども長期の育休を2年も取るやつだから、私の価値観がまるでわからない。私の喉から手が出るほど欲しいものを彼が占有している関係を作り、それを目の前にぶら下げながら自分の意のままに私を操りたいのに、私がなかなか尻尾を見せなくて苛立たしいのだ。いやはやなんと底の浅い価値観だろうか(決め付け)。

私が喉から手が出るほど欲しいもの。それは残念ながら彼だけが差し出せないものなのだ。社長の退任。それこそが今、私が唯一会社に対して切に願っていることなのだから。