un deux droit

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ハゲライフについての路線変更

大学の先輩に飯に誘われたので出かける。彼は福岡に赴任して6年。この度東京に戻る辞令が出たとのこと。赴任した時に旧交を温めて以来の再会。お久しぶりとさようならしかしない関係が友人と呼べるのかはよくわからない。どうせもうアスペルガーとして生きると決めたのだからそれで良い。アスペルガーは友人から呼ばれたら素直に来るが自分からは決して誘わない。そのためそのまま自然消滅する関係が多いのだとか。自分が付き合い悪いのは、アフター5にプライベートな予定でほっつき歩くことを良しとしない妻との喧嘩の積み重ねの結果である。友達と飲み歩きたいがその後の口論と必ずセットならば、それを受け入れてまで誰かと会いたいと思うことがなくなってしまったのだ。友人と過ごす楽しみよりその後の妻の罵倒による苦しみが上回り、次第に友人と過ごしている時間も妻の存在が頭から消えずリラックスして楽しめなくなった。

愚痴が長くなった。友人の話である。彼と共通の友人が先日結婚したという話になり、披露宴の写真を見せてもらった。そこには卒業以来会えていない数多くの友人が写っていた。懐かしいなぁとこぼしながらしげしげと眺めていると、2割くらいの友人の頭髪が著しく後退していた。彼が「〇〇さんもすっかりハゲあがっちゃって」「こいつは意外と踏みとどまってるな」と無邪気に笑う。彼は髪質的におそらく白髪になっていくタイプでハゲとは無縁。それゆえハゲに残酷でいられる罪深き人だ。

私はそうっすねと適当に相槌を打ちつつ、ハゲていい人相とだめな人相について思いを馳せていた。陽キャだったある後輩は35にしてもうほとんど髪が残っていなかった。大学のときはフサフサで、あまりの変化に驚いたが、写真の彼は表情に一点の曇もなく、むしろ風格や威厳すら漂わせていた。大手の自動車メーカーに勤め、アメリカに赴任している彼は羽振りもよく充実した人生に対する満足がヒシヒシと伝わってくる。髪なんかくれてやるといった佇まいだ。

もう一人完全に禿げ上がった先輩は悲愴感漂う人相だった。ニヒルなキャラでタモリ倶楽部をこよなく愛していた彼は、禿げ上がった人相が酷薄な犯罪者のようだった。表情は堅く能面のようで、私が好きだった彼のウイットに富んだ冗談はもう彼の口からは聴けなさそうだった。

さて振り返って私である。私もかなり地肌が露わになってきており、あと2〜3年で写真の旧友と同じ運命を辿ると予見される。昨日までなすがままに任せようと思っていたのだが、流石にこれは何かしらの悪あがきをすべきだと感じた。自分の人相は間違いなく仏頂面方面なので、髪が失われると怖くなる。外見のビハインドに打ち勝てるほどの能力や地位がすでにあればそれでも構わないのだが、凡人の私は外見を取り繕っておかない不利な扱いを受けると思う。新規事業の責任者として社外への露出も増える。社内の人間にも広く協力を得る必要がある。新規事業の成否は自分のこれからの人生を占う。私の外見が与える悪印象で、事業をポシャらせるわけには行かないのだ。

腹をくくったらそこからの話は早い。早速AGAクリニックの予約を取った。発毛を促進する内服薬と脱毛を抑制する内服薬を処方してもらい、うまく発毛できたら脱毛抑制だけに切り替える方針。ざっと計算して1年で30万くらいあれば事足りる。頭髪の後退が気になりだした5年ほど前には高く感じた薬代は、さほど収入の変わっていないにも拘わらず今となっては端金に思える。妻と喧嘩を繰り返して人生に嫌気が差し、より刹那的に、より自己中心的に、より快楽的に人生を送ろうと思うようになったのだ。髪なんて遅かれ早かれ無くなるのだから、そんなものの維持に大金をはたくのはバカバカしいと思っていたのだが、どうせ人生そのものがバカバカしいのだ。どうせ意味のない人生なのだから、せめて少しでも気分良く過ごす時間を長くしたい。今まで律儀にボーナスを全額家計に入れていたが、別に妻に金額を把握されているわけではないので、初めて自分のために大金を使ってみようと思う。なんか価値観変わりそうだな。