un deux droit

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商機より大切なものが男にはあるんだってさ

最近、仕事のことについて書けていない。
あまりに落胆して、情けなくて書く気にもならないことが続いているのだ。

ごくかいつまんで書くと、私が進めてきた新規事業が社長の一声で停止した。昨年末に企画案を共有したときには興味なさげだったくせに、いざ試験的にリリースしてみると、その反響の大きさをみて「俺は聞いてないぞ」「正式に認めていない」と凄んできたのだ。

セキュリティだとか品質保証だとかの話をごちゃごちゃとしていたが、そこのケアについてはぐうの音も出ないように完備している。それでもいちゃもんをつけてくるのは結局、単なるやっかみだ。他にも社長にいちいち稟議を通さないで始めている商品やサービスなんてごまんとあるが、なぜ私のだけ目の敵にされるかというと、自分がサービスのプロセスのどこにも一枚噛めていないものが、顧客にウケたのが許せないのだ。

ここ一年、社長の肝入りで始めた事業はことごとくこけている。ろくに市場調査や顧客ニーズのヒアリング、無料お試しなどもせず、社長の妄想だけで作ったガラクタが法外な値段で売られている。鬱陶しいキャンペーンを執拗に打ち、顧客の離反を招いている。営業に販売ノルマを課して檄を飛ばすが、必要性も利点もピンとこない商材をむりやり売らされる営業の士気は地に堕ちた。誰からも協力を得られずに社長は孤立している。
そんな中での私の事業構想は、何のキャンペーンも売っていないのに、口コミで問い合わせが広がっている。丁寧に作り込んだ企画書を営業に共有し、それを顧客に送りつけるだけで話を詳しく訊かせてくれとすぐさま反応がある。そしてそのアポイントには私が同行して説明は全て代行する。営業が余計なことを覚える負荷はない。それでも売り上げがついたら営業の成果になる。とことん営業フレンドリーな打ち出し方をしたので、営業に頼み込まなくとも勝手に紹介してくれるのだ。

こうやって、本来は社長が自分のアイディアで実現したかった顧客の熱狂を私の事業が独占してしまった。これが彼のプライドを著しく逆撫でした。自分の事業はかなりの大金を投資したのに顧客にはそっぽを巻かれ、営業現場は冷めきっている。私の事業は初期投資がほとんどないのに顧客は入れ食い、営業も盛り上がっている。こんな無様な事はない。

そんなわけで今日の役員会にて、改めて私の事業を公式にリリースするかの審議がなされ、ほとんど換骨奪胎に近い原型を留めないスクラップの状態にされてリリースが許された。価格は馬鹿みたいに上がり、要らないサービスが勝手につき、別の事業の傘下の付属サービスに成り下がった。

この会社の社運を左右するような重要な事業になる予感がしてワクワクしていたのに、経営者自身によってその芽が摘まれてしまった。損失を出したわけでもクレームが発生したわけでもない。たった1人の男のしょうもないプライドのためにだ。こんな暗愚な男を後継者に据えた先代を恨む。

それにしても、この新規事業は私なりの会社に対する恩返しのつもりだったのに。就職難民になりかけていた自分を拾ってくれて、育休もちゃっかりしっかり2回取って、それなりに生ぬるく恩は感じている。未完の大器と揶揄されて、10年以上もくすぶってきた私がついに本気を出して考え抜いた事業だ。真っ当な経営陣なら「あんどう、見直したぜ」と喜んでくれると思っていたのに。はてさて、この会社はどうなるのでしょうか。