un deux droit

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敵前逃亡

9月頭にある集合研修で自分が調査結果報告とワークショップをまわす予定になっている案件があった。
もう受注してしまっている案件だが、これだけ新型コロナが蔓延している中で、ワクチン未接種で約50人が集う3密の会場に特攻するのは嫌だなぁと思っていた。

そしてお盆明けの今日。早速お客さんから電話。
お客さんは職域接種を完遂している大手のお客さんだから強気に集合研修実施を貫く構え。けれど1泊2日の日程は単日にするらしい。ここが攻め時と考え、自分のパートを割愛する提案をした。

実はお盆中にこの提案を仕掛けるための布石を打っておいた。組織全体の調査結果に対するコメントしかオーダーを受けてなかったのだが、職場ごとのコメントをサービスで提出したのだ。
これによりワークショップで参加者自身が自分たちの職場の課題を調査結果から紐解く、という作業を手っ取り早く肩代わりしたことになる。本当は自分で頭を悩ませて仮説を作るのがミソなので、答えを教えてしまっては学習効果がゼロなのだがお客さんからすればカンペができて楽にはなった。
職場数が膨大なのでまだ7割分しか完了していないけれど、出来上がった分から先行して提出したところ、出来には満足いただけたようだ。

「で、これがあるとある意味ワークショップやる必要なくなっちゃったんですけど、割愛しましょうかね」

先方からすれば無償で職場別のフィードバックが手に入ったうえ、ワークショップ分の費用も発生しなくなる。そんなことを先方から打診するのは取引先への圧迫になるので口が裂けても言えないが、なぜか業者側から都合の良すぎる話を提示されたのだから乗らない手はない。案の定、ホイホイ「そうしてもらえると非常に助かる」と乗ってきた。こうして私は出張ミッションをキャンセルすることに成功した。先方担当者からすれば、1泊2日のカリキュラムを圧縮しなければならない無茶苦茶なタスクに対する強烈なアシストだし、それを業者と交渉する手間も省けたし、ついでにお金も浮いた。何一つ言うことない。

まさか私がコロナに感染したくないだけの理由でここまでのことをするなんて理解してもらえないだろうけど、もう自分の身を守るにはとにかく人ごみに出ないことしかないのだ。ワクチンを打っても感染しないわけじゃない。家族が感染したらもうそれだけで数週間マネジメントが崩壊する。でもそれが怖いから仕事やりません、と正面切って言ってそうですよねと理解する頭が相手にはない。であればその理由は隠して別の方法で抜け道を探すしかないのだ。

会社は売り上げが減るが別に自分の懐が痛むわけじゃないから気にすることはない。私が無償サービスで余計な仕事をしたこともばれない。どうせ予算は達成するし、達成してもしなくても自分の給与はほぼ変わらない。一方、当日メインで研修する講師だけは研修会場に投入する。自分の代わりにリスクを負ってもらう。幸いその講師はワクチン二回打っていて、リスクをリスクだと思っていない。私の案件以外でも全国を飛び回っているので、仮に感染していてもどこでどう感染したかわかったもんじゃない。(この人と同じ空間にいるのが最もリスクかもしれない。)この講師にも「なるべくオンラインで研修やるようにしたら」と説得することもしない。無謀な顧客がいる限り無謀な講師が必要だからだ。

自分ももうモラルハザードが起きてるなと実感。コロナに関しては何がモラルを守ったことになるのか共通の基準がないからどうしようもない。私は営業として集合研修に講師を派遣するのに心が痛むが、当の派遣される講師が何の痛痒も感じていないのだ。どこまで行っても話はかみ合わず、私が変人と思われるだけだったりする。自分の関係ないところでよろしくやってくれ。自分は戦場にはいかない。