un deux droit

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社長と喧嘩した

当社の社長は承認欲求が人一倍強く、毎週ありがたくない社長メッセージをグループウェア上で全社員向けに発信している。

内容は下らない自慢話か、社員を褒めることを経由しての自慢話か、昭和の価値観の押し付けだ。

ご丁寧にいいねボタンが設定されているため、内容の良し悪しにかかわらず、社員はいいねを押してあげなければならない無言の圧力を感じている。

私は原義通り、いいねと思った時のみいいねを押しているため、いいねと思う事がほぼない社長のポエムに対し自分の気持ちに嘘をついて承認してあげる優しさを見せることはない。

気持ちの悪いことに、社長は誰がいいねを押して誰が押していないか手作業でログをとっているようで、たまに会うと「君は読んでないみたいだけど…」と迫ってくる。

私は「ちゃんと読んでますよ。ボタンの表示を読みました、に変えてくれたら押しますよ」と建設的な提案をしているのだが、一向に改善する気配がない。

 

まぁそんな社内クソブログで先日事件が起きた。

普段おとなしめにしている某社員が、ブログ内のコメント欄で公然と社長の記述に噛み付いたのだ。幾分舌ったらずな表現ではあるものの、指摘自体は的を得ていて社長がどんな反応を示すかと静観していたところ、社長は大人気もなく某社員の認識が誤っていると攻撃を重ね、謝罪と訂正を要求した。全社員が閲覧できる場で社長が平社員を吊し上げているのだ。その某社員も説明を重ねて対抗するものの社長の気が治まらない。泥仕合いの様相を呈してきた。卑怯なことに、いつも社長の親衛隊を自称している下らない執行役員や部長陣どもは穏便に事態を収拾させようと介入することなくダンマリを決め込んでいる。某社員の上司が部下を庇ってもいいはずなのに一向に反応がない。

私は事の成り行きにうんざりしながらも、この正当な指摘を行う某社員を見殺しにするのはあまりにも忍びないと思い、火中の栗を拾うことにした。中途半端に手を延ばすと大火傷するので、容赦なく徹底的に社長の一連の言動を論破した。某社員の主張の解釈を社長が取り違えていること。そしてその見解に対して論点をずらしてばっかりで真正面から回答していないこと。社長の一連の発言の中に致命的な矛盾が孕んでいること。双方向のやりとり、特に自分と異なる見解を持つ者を歓迎できないならば、一方向性のメディアを選ぶべきことなどだ。

もちろん社長は私の諫言にもムキになっては向かってきたが、結局深夜3時くらいまで公式スパークリングを繰り返したのち、某社員への謝罪を引き出すまで徹底して詰めた。

 

今朝多くの社員から労いと称賛を受けた。勇気がある。私も同感だった。誰か社長をギャフンと言わせてくれないかと思っていたからスッキリした、などなど。誰もリスクを取らず客席でスリリングな試合を観戦できたのだからさぞかし興奮したろう。

社長の様子を伺うと、顔を赤黒くさせてご機嫌はよろしくないようである。せっかくの毎週の自己肯定感向上の機会を潰された挙句、思いっきり顔に泥を叩きつけられたのだ。

この歳になってまともにやり込められることなどなかったろうから伸びきった鼻っ柱をへし折ってやれていい気味である。

なお、本件についての報復行為については予想がついている。専務より来期の拠点長への登用が内示されていたのだが、それの白紙撤回だ。降格とは違うから何かと理由をつけて延期しやすい事柄だろう。そういう大人気ない姿は何度も見てきた。

私としてはニンジンをぶら下げられている真っ最中の事柄だったが、このニンジンは毒入りである。こんなしがない中小企業の管理職という地位と幾ばくかの昇給のために、言うべきことを飲み込むようでは役割を全うできるはずもない。弱みを握られている環境下で魂を売らなかった事の方が私の今後の人生において有益な事であったと自分を慰めて、来期以降もヒラ街道を驀進しようと思う。

それにしても漁夫の利を得たのは左遷予定だった私の上司だな。おめでとう。