un deux droit

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第一章 エイプリルフール 5

「じゃー、とりあえず部屋いこか」
 金髪に促され、棟の入口上部の壁に、緑色のポスターカラーで「C」と殴り書きされた通路へと誘われた。
「そういや名前まだやったな、俺、山田って言うやけど、寮ではおはぎって呼ばれてるからよろしくな。たいした意味はないねんけど。」
 見た目となんの脈絡もないあだ名に当惑しながら薄暗い廊下を進んでいくと、ガムテープがベタベタ貼られた薄汚れた扉に突き当たった。
 おはぎと名乗った金髪男が勢いよく扉を引き、「新入生きたで〜!」と声を張り上げた。しかし中からは反応がない。あれ、おっかしーな、と金髪が首を傾げてズンズンと進んでいくので、私は慌てて後について中に入った。

 扉の奥へと続く薄暗い廊下には汚れたTシャツやらコピー用紙やらが足の踏み場もないくらい散らかっており、奥に向かって部屋の入り口らしき空洞が左右に連なっている。空洞というのは、個室の扉が全て取り外されて入り口だけになっているからだ。
 金髪に促されて、左手の手前から2番目の部屋に通されると、部屋にはボロボロの畳と、しなしなで中身のバネが所々見えてしまっているマットレスがびっしりと敷き詰められており、

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