un deux droit

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第一章 エイプリルフール 4

 私の淡い期待は脆くも崩れ去った。全寮放送を聞いて集まった顔ぶれは、先ほどの回で新入生を捕獲できなかった「はずれくじ」の面々だった。
 前回の反省を踏まえたつもりなのか、それぞれの部屋は趣向を変えた一芸を披露してきたが、どれも付け焼き刃の生煮え状態で仕上がっておらず、グダグダ感を一層増していた。
 新入生を獲得しようといきり立つ群れの中に、先ほどは見かけなかった男がいた。男はニキビの目立つ蒼白い顔で、不健康に痩せていた。男の横には例の座敷童子が立っており、不機嫌な顔をして男の腕を掴んでいる。どうやら彼女が男を部屋から連行してきたようだ。やがてその男の部屋紹介が始まった。

「あの…個室です。1人だけ受け入れます…静かに暮らせる人だけお願いします」
男は自分の部屋を全くアピールすることなく、終始嫌そうな顔をしてプレゼンを終えた。

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