un deux droit

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【書評】劉慈欣『老神介護』/『流浪地球』

三体シリーズを読破して、もう彼の文章はお腹いっぱいだと思っていた。

宇宙をネタにした話はもう三体で書ききったでしょ。あれがもう唯一無二の結論だよ。これ以上何を付け足すことがあるの。そう思えるくらい、三体が素晴らしかった。彼の他の作品を読んで、三体で得た完璧な満足感を壊すことが怖かったとも言える。

そんな心配は杞憂だった。



この二作は、劉慈欣の短編集である。宇宙ネタでこんなにこすれるの?ってくらい次から次へと魅力的な設定が飛び出てきて、あっという間に読破。ミクロ紀元、白亜紀往事、山、呑食者は、本当にそんな文明がありそうだとワクワクしたし、それ以外の作品は人間の描き方に引き込まれる。


彼の作品からは孤独と絶望に対する執着を感じる。そこまで容赦なく、そして躊躇なく、登場人物を追い込みます?寝る直前に読んだら高確率で悪い夢を見る。

基本的にはバッドエンドなんだけど、そんな悲劇をはるかに凌駕する、スケールの壮大さで興奮させられる。悪いはずの後味が無理やり丸め込まれて、読後感はなぜか清涼。そんな不思議な世界をぜひ体験してみてください。