
オフィスの向かいに、生ドーナツ屋がある。
いつもとんでもない行列で、先の真夏の炎天下でもその行列は途絶えることなく、みんなよくやるなーと感心していた。
先日、ランチ終わりに店の前を通ると、行列が5人ほどになっていた。
え、これラッキーすぎね。
今まで行列のために見向きもしなかった店だが、思いがけずチャンスが巡り込んでくると、食べたいわけでもないのに並んでしまった。
足元に百円玉が落ちてたら、ラッキーとせしめてしまいそうになる感覚に近い。子どもの頃は無邪気に我が物にしていたが、オトナになって多少の分別がつき実行には移さなくなった。しかし窃取の衝動自体は脳内で起こるもんで、さもしい人間性というのはそう簡単に矯正されるものではないのだ。そんなわけで、食べたいと思っていたわけでもない店の行列にノコノコと並んでいる。ああ恥ずかしい。
その恥ずかしさの忍耐も、回転の速さのおかげで5分ほどで済み、無事に入店することができた。

店内はなんとなくハリー・ポッターの世界のお菓子屋さんみたい。百味ビーンズなんかが店の隅に置いてありそうなワクワク感がある。

会計の列を進む間は、生地をこね、揚げ、チョコに浸す調理のライブ感を楽しめる。雰囲気に乗せられ、また次に食べる機会もそうそうなさそうだと思い、3つも買ってしまった。
いかにもな袋を引っさげて、オフィスへと戻る。流行に乗り遅れたオッサンのミーハーな小躍りは客観的に見て激キモだが、なりふり構ってはいられない。包装を解いて、いざ実食。

一口、頬張る。うん、たぶん美味しい。しっかりと材料にこだわった品格を感じる。たぶん。表現したい食感や舌触り、歯ごたえといったものに制作者の意図やこだわりがしっかりあるというのはよくわかるし、今まで食べたことのあるスイーツのどれとも被らない新しさもある。確かにこのファーストバイトを表現する擬音はまだ発明されていない。なるほど、と感心する。ただ、私には高尚すぎて、神妙な面持ちになってしまった。こういう時に、自分は庶民だなあとしみじみと思う。スイーツはもっと軽薄なものが自分の性に合っている。

というわけで、軽薄なタマゲタケを貼っておく。こういう笑えるのがいいね。生ドーナツと同じくらいの値段なのは笑えないけれど。