un deux droit

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あえて使えない先輩のごとく立ち回る

3年目の男性社員から「こういうシナリオで提案しようと思っているのだけれど、提案書作ってもらえませんか」という依頼が来た。お、おう、自分で作るから雛形をくれじゃなくて、丸投げなのね、、先輩社員になんの躊躇もなく資料作りを押し付けられる神経。本社はどのような人材育成をしているのだろうか。

私が進めている新規事業を絡めたプレゼンだったので、責任者を一枚噛ませたほうがいいと、彼は判断したのだと思う。しかし、こちらは商材を提供する側であって、それを調理するのは営業の領分だと思う。個人的には提案書作成こそが営業の本領だと思っているので、そこを易々とアウトソースしてしまって、この人は今後まともな仕事ができるようになるのだろうかと心配になる。

一計を案じて、あえて虫食いの提案書を書き上げた。ここは営業担当にしかわからない/営業担当ならわかるはず、という箇所を空欄にしたのだ。それ以外の素材は、彼でも集められるような過去の提案書からかき集めたスライドの寄せ集め。この箇所は営業担当が裁量で書いていい/書くべき場所なんだよ、ということを暗に示してみた。

きっと彼はマイクロマネジメントの上司の元、自分の才覚でお客さんと正面から向き合うことを許されてこなかったんだろう。こういう言い方をしろ、この資料を置いてこい、これを売ってこい。どうせお前が頭を使っても時間の無駄だ。頭を使う暇があったら足で稼げ。ひたすら指示を忠実にこなすことだけを求められ、それをロボットのようにこなすことができれば誉められたのだと思う。本社の営業の上の方のメンツを見ると、そういう人を馬鹿にしたようなやつしかいない。彼も被害者なのだ。

しかしこれからそういう伝書鳩はリストラの運命にある。まだ当社が中小だから成り立っている奇異な仕事のスタイルだということに早々に気づいてほしい。何もわかっていないうちに効率から押し付けるのは最悪だ。まずは自分の力でなんでもやってみる。失敗してむざむざと商機を逃し、自分の等身大の実力のなさを嫌というほど自覚する。そこから歯を食いしばって脳味噌から血を流して、自分なりのスタイルでお客さん買ってもらえるためのコツを掴む試行錯誤をする。それが成就して初めて効率の話をしても良い。

私に資料を丸投げする先輩社員もいるが、私が仕上げたあと、一瞥して自分なりに手直しして顧客に出している。それはやはり自分が最終責任者として提案するという自覚があり、自分なりの売り方のコツ、ポイントがあるのだと思う。その「隠し味」を持っている人だけが、人に資料作りを丸投げして良い。それでこそ原料を使った生産者が浮かばれるってもんだ。

3年目の彼は直接の部下じゃないからできるのはこれくらいのことだけど、違和感を覚えて何かを感じ取るセンサーが働くといいな。おそらく、なるほどと素直に受け止めるか、めんどくさーやつだな言われた通りに仕上げてこいや、と思うかの瀬戸際に来ているはずだ。憤る前に、「そもそもこの仕事は人に振って良いものなんだろうか」と自問してくれることを願いたい。