un deux droit

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就業時間後に社員の行動をどこまで強いることができるか問題

昨日、珍しく20時過ぎに会社携帯に電話がかかってきた。普段あまり連絡を取り合わない技術部統括の取締役だ。個人的に親しくしていたので悪い話ではなかろうと迂闊に電話を取ると、予想外の内容の相談だった。

「木村課長が、オンラインセミナーの休憩時間に突如として消息を絶った。講師不在で進められなくなったのでセミナーは打ち切った。携帯に電話しても全くつながらない。万一急病の可能性もあるので様子を見にオフィスまで出向いてくれないか」

木村課長というのは私の元上司にあたる。かつては支店長の職位についていたが業績不振につき部下のない名ばかり課長職に降格していた。上司部下関係は解消したものの、今でも福岡オフィスを共にする数少ない同僚として同じ職場空間を共有してはいるので、全くの他人というわけではない。
しかし、その不確かな情報だけでは出動要請に応えられないと断った。

今のオフィスはレンタルオフィスで、個室は18時以降オートロックがかかる機能がある。そのため、カードキーを持参せず迂闊に部屋を出ると締め出される。そして18時以降は常駐スタッフもいなくなるので、手荷物丸ごと部屋に置いたまま部屋を出てしまうと完全に詰むという厄介な仕組みになっている。おそらく木村課長はカードカーも携帯も財布も全てデスクに置いたまま迂闊にトイレへ向かい締め出されたのだろうと推察したのだ。
仮にそういうことだったとしたら、いい大人の尻拭いをするなんて役回りは御免である。仮に無一文で放り出されたのだとしても、まだ残業している他の会社の人を探し回ったり交番に駆け込んで、恥を忍んで電話を借りたりして、会社に連絡するのが社会人の責務だろう。

課長はもう50近いので脳梗塞や心不全など突発的な病が発生した可能性もゼロではない。だとすれば今から動き始めて1時間以上かかるオフィスに、物理的に人を送り込んだところで手遅れである。申し訳ないけれど最悪の事態を想定したとて私の出動は無意味なのだ。

「ところで緊急連絡先に奥様の電話番号の登録はないのですか」

そう問いかけると、調べてみるとの返答。いやそこはまず家族だろ。ここで使わなきゃいつ使うねん。実の家族より会社の「擬似家族」の方が優先されて、業務命令的に人を動かせるという発想がもうシーラカンス状態である。就業時間後の懇親会を特段の事情を社長に報告しない限り欠席できないような昭和ノスタルジーな企業体質なのだ。呆れて電話を切る。

程なくして、木村課長から無事の連絡がついたとの連絡があったそうだ。いわく、同じフロアの別の会社の人に電話を借りて連絡を取ったが本社側の外線が終了時間後の自動応答になっており、やむなくタクシーで帰宅、自宅のPCから teamsを立ち上げようやく本社と連絡が取れたそうだ。木村課長の落ち度があるとはいえ、本社側の体制のお粗末さが際立つインシデントであった。会社側から連絡手段切っていたのにどうしろっちゅうねん。軍隊チックにマネジメントしたいならガバナンスもちゃんとしろよ。

ともかく木村課長が無事で良かったのだが、同僚の有事に一目散に駆けつけなかった私の評価が勝手に下がったので勘弁してほしい。人の良心につけいって、冷静な判断をさせず本来する必要のない行動をけしかけられた気がして憤っている。本社が東京で、事件が博多で、私が福岡在住だったから都合よく利用しようとしたわけだけど、事件が那覇で起きたなら誰か社員を送り込むか?それなら一旦静観するか現地の警察に連絡を入れるはずだろう。だから今回の福岡事件でも本社は那覇でやるはずの対応をするべきだったのだ。対応は公平に一律にだ。これが私の私見。この場合どっちが非常識なんだろうか?