un deux droit

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犬も食わぬ矜持

会社の広報企画会議で担当役員と痴話喧嘩。我々は顧客にどのような問題提起を行い、どのような解決プロセスを提起するのか。その芯を食った話にいつまでも踏み込まず、抽象的概念と最近流行りのビジネス用語の羅列が冗長に連なったパワポの説明をくどくどを聞かされて、「パワポはもういいぜ」とちゃぶ台を返した。

この役員、毎度毎度なんか考えてるふうなパワポを会議のたびにせっせと新調しているが、パワポから先に一向に進まない。欲しいのは具体的な成果目標と行動指針。図をごちゃごちゃといじくり回すだけのパワポ職人が高い報酬をふんだくっているのは許せない。

役員が弄ぶ総論をすっとばして、各論にずかずかと踏み込み、想定される着地点について先回りしてNOを突きつける。すると途端に役員は度を失い、「私の描いているグランドデザインを前提として動いてもらわないと困る。それを否定するのは役割放棄だ」と詰る。私も負けじと「ほらすでに自分の腹案ありきで話進んでんじゃん。この企画会議は茶番か。メンバーの意見を積み上げて方向性決めるっていう建前を放棄するの早すぎだろ」と突き返す。「いや、大枠は決まってるけど細部はメンバーの意見を尊重したい」と役員。「大枠からメンバーで決めるべきだ」と私。話は平行線を辿り時間切れ。仕切り直しの会議を設定することになった。

なんで私はこんなに食い下がるのか。普通は部署の方針があってそれに従うのが会社員ってもんだろうと人は言うかもしれない。しかし、このポンコツ会社で物書きをしているのは私だけなのだ。私の書いたものだけが会社の公式見解になる、という異常な現状。図を転がし、単語をWEBの大海からかき集めることができる人間はうんざりするほど滞留しているけれど、一本筋の通ったマトモな文章を書き上げてくる奴が終ぞ現れない。

私が2年前に広報の企画件執筆をするようになってから、顧客からは「前までのは正直読んでなかったけど、最近良くなったよね」という評価をいただくようになっている。自然発生の購読件数も増加している。社内ではほとんど読まれてないし、意味を読解できる人間もわずかなのに、読者には刺さっている、という珍現象が起きているのだ。その実績を鑑みていただけたら、私がやりたい広報のグランドデザインで構想を固めるわがままくらい言わせてくれてもいいだろう、というわけ。

件の役員は「あんどうの特集は何言ってるかわからない」と、自信の低IQに私の記事をダウングレードするよう要求して憚らない。読者がついているという不都合な事実を受け入れられない。しかし私が「そんなにご不満ならいつでも解任してくれて構わない。他のライターを発掘するかご自身が何か発信されては」と突き放すと、その喧嘩を買って執筆に勤しんでくれるわけでもないどうしようもない腰抜けだ。自分では生産できないくせに、どうしても農民の地位向上だけは図りたくない吝嗇な地主。あぁそれにしても一人一揆の虚しさよ。