un deux droit

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「良い組織」は生態系の摂理に逆らわない

顧客との商談で「良い組織とはなにか」という談義になった。
良い組織の要素を顧客があれこれと列挙する中で、私は「良い組織なんてものは存在しないんじゃないすか」と話を混ぜっ返してしまった。
「良い組織の条件」なるものを抜け漏れなくピックアップして、その要素を満たしていくプロセスを想像したときに、嘘くさい感じがしてしまったのだ。

今の会社に勤めて痛切に感じるのは、アクトン卿を引用するまでもなく、「組織は腐る」ということ。組織とて結局人間の集合体なのだから、日を追うごとに老化していく「生態系」なのだ。個別の細胞は定期的に新陳代謝されるのが自然で、新陳代謝されない細胞は「ガン」なのである。決して「良い」組織だから存続し、「悪い」組織から没落するのではない。新陳代謝がなされていれば持続し、なされてなければ腐敗するというだけなのだと思う。

組織を持続したければ、権力を持つ者の任期を定め、定期的に入れ替えること。また構成員も4分の1くらいは年間で入れ替わったほうがいい。意思決定者が変わらなければ、そのものの老化に引きづられて決定の質は落ちる。構成メンバーが変わらなければ新しい知恵が流入されない。
そして構成員一人ひとりは常に複数の組織へまたがっているのがよい。外部刺激に定期的にさらされることで「細胞」として古くなりにくいし、組織に有益な知恵を持ち込める。また、仮に一つの組織が没落しても巻き添えをくらわず回避することができる。一つの組織にしか属していない場合は組織の腐敗の影響をダイレクトに受けて、自分の価値も下がる。

構成員全員がその組織に固執せず、出入りが旺盛な方が風通し良く、かえって組織は長持ちする。組織都合だとそうだけど、個人都合で考えると生活の安定が損なわれるから、複数の稼ぎ口を確保する方向に促したほうがいい。そうやって組織の密度を下げて、日当たりをよくしたら個々の成長もかえって高まる。そういう生態系のメカニズムを観察して、永久不滅のものを作り上げようと邪念を抱かず、摂理に逆らわずにやっていくことが肝要なのだと思う。

ということで、顧客には「組織を良くしよう」と志向すること自体は価値のあることだけれど、そのことに固執すると組織の代謝が落ちて「悪く」なるから気をつけたほうがいい、という冷水を浴びてもらった。顧客が求めていた答えとは違っていただろうけど。