un deux droit

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起案はロベカルのごとく

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ランニングを始めて1年。10km走でついに50分切り達成。序盤で足の軽さを感じ「これはいける」と心躍り、中盤で息が上がり「調子に乗りすぎた」と心折れそうになるも、終盤にかけて案外と5:00/kmのペースで持ち堪えて、ラスト2キロは記録を作るためだけに死に物狂いで走り抜けた。両足攣りそう。もっと優雅にタイムを出せるようにはなりたいが、とりあえず年内の目標は達成。久々に味わう爽快な気分。

 

平日の昼間から何やってんだという感じだが、お察しの通りのどこに出しても恥ずかしくない堂々たる閑職である。上司もおらず、責任もなく、売上目標も片手間で達成できるような程度の難易度で、タイムカードをスマホでピッとやっておけば何時に働こうと働いていまいとチェックされることはなく、顧客と仕事をとことん選り好みし、電話には基本的に出ず、折返しはメールで、というふざけた勤務態度を貫くことで気分よくランニングする時間を捻出している。

とりあえず暮らしていけるだけの定期収入があり、それに見合うであろうと自分が勝手に勘定した労働時間だけを拠出し、あとは好きに本を読んだりして暮らしている。誰かに口出されることなく自由に処分できる時間がたくさんあることは幸福だ。こうやって健康の維持も無理なく行えるし、贅沢に時間を使って思考を巡らせることもできる。そうやって生み出されたアイディアが案外会社の役に立って、採用されたりするもんだからますます私の労働時間は聖域と化している。

会社の同期が次々と要職を射止め、嫉妬に狂う時期もあった。しかし、しばらく観察していると、底意地の悪い経営陣の内紛に巻き込まれながら右往左往し、対価を支払われない無意味な残業を重ね、自分のやりたいと思った仕事は何一つできず、ストレスと不摂生から血色の悪い顔と締りのない体を手にし、一般社員よりいくばくか多い給金で自分を慰めている姿を見て、これはラッキーだったなと思うようになった。

むしろ彼らが寝不足と情報収集不足でまともに頭が働かない状態が慢性的に続いてくれているおかげで、彼らのブレーンとして重宝してもらっている。泥水を啜る苦痛をアウトソースして、アイディアが具現化されるという果実だけ得ている。アイディアをパクられて手柄を取られることもあったが構わない。自分の頭で考えたものでない構想は、上辺だけ剽窃しても必ず行き詰まる。そして原作者である私に遠からず頭を下げに来るのだ。

出世した同期とて才能はあるのだから、健全な心身と十分な時間さえ与えたら私のアイディアを踏み台にしてオリジナリティを発揮して構想を我がものとすることも可能であっただろう。しかし彼らには睡眠が足りない。自由になる時間もない。だから思考を突き詰める余裕がない。知性を司る主体としては完全に息絶えている。気の毒に思うがそれもまた自分で選んだ人生。もっとマシな経営陣のいる会社なら才能を存分に発揮できたと思うので、こんな会社にとどまらずさっさと新天地を得るべきだったのだ。しかし彼らが壁としてとどまってくれたおかげで、私は経営陣と衝突することなくペナルティエリアのはるか後方から弾丸FKを炸裂させまくっている。まぁこれもなにかのめぐり合わせということで、虫のいいポジションをキープしつつ、私の生命線であるシュートの精度を落とさぬよう、引き続き走り込まねばなと思っている。