un deux droit

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「仕事」の要素の最小単位

昨日に引き続きWebマーケティング戦略の構想会議。論点が整理され、いよいよ採用する戦略について意思決定をしてゆく段階に到達。チームには私のほかに現広報担当2名、役員1名と、先月中途入社したWebマーケティングの専門家が1名。この専門家がなかなかやり手で、当社にはいない水準の知識と経験と思考力があるため、入社当初のジョブを大きく逸脱して様々なプロジェクトの再建に駆り出されている。経営陣も「彼のやり方で間違いない」と白紙委任状を乱発するもんだから、そのあまりの贔屓ぶりに、生え抜き社員は彼のことを裏で「GM」と呼んで冷笑している。


確かに彼はずば抜けてハイスペックだ。言っていることはいちいち勘所を抑えていて、ひるむのもわかる。でも業界素人の人間に対して10年戦士たちが早々と白旗あげて軍門に降る様を見てあまりに情けないと感じた。お前ら、そこそこな時間を費やしてこの業界に従事してきたプライドはないんか。私は彼が他のプロジェクトで、今までの議論経過を無視してゼロペースで試案を打ち込んできており、結果その案がそのまま最終形として採用されてしまっているお粗末な実態を事前に把握していた。なのでまずは先手を打って私案を述べ、それに反論をもらうという議論の展開に持ち込んで主導権を渡さないのが肝要と思いMTに臨んだ。

MTの開始早々、私は「機能までの議論を整理すると…」と切り出して、これまでの戦略の背景、修正すべき点、大切に継承すべき点を整理し、それらから導かれる戦略の方向性、具体的な打ち手について一気にまくしたてた。その私案は贔屓目に見ても、あまりにマーケティング素人丸出しの、エモーショナルな要素満載のプランだ。専門家にしてみれば、私の無様な醜態は煮るも焼くも自在な生贄にしか見えまい。しかし私はあえてそのリスクを負い、さてどう料理してくるかお手並み拝見と、自ら丸裸にまな板の上で座した。

すると予想に反して、「基本線は私もあんどうさんとだいたい同じようなことを考えていました」と切り出された。「しかしこの点については私は〇〇と考えたほうがいいのでないかと思っていました」「ここは△△より□□ですね」「ここは活かしで。ぶらさないほうがいいですね」「こういうやり方が有効性が高いと思います」と私の案を補強し、ブラッシュアップする方向性で話を進めてくれたのだ。私もすぐに調子に乗って「実はここは〇〇というアプローチもありかなと検討していたのですが」「□□と言われましたがここはゆずりたくないんですよね」と甘えのフェーズに転身。しばらくの時間ギャラリーを置いてけぼりにして、私と専門家の掛け合い漫才が続いた。恥を忍んだ甲斐があって、これまでの基本線をしっかり継承しつつ、より戦略性が鮮明になったマーケティング構想に落着した。

MT終了後には専門家から、「あんどうさん、今後も今日みたいにどんどん好き勝手に話してください。それを形にするのが私の役目ですから」と余裕綽々な挨拶を受け取った。子ども扱いされていささか不愉快ではあったが、生え抜きの意地は見せられたのかなと思う。物事に取り組み際の「こだわり」と、それを貫く「勇気」があれば、とりあえずなんとか最低限の「仕事」としては成立するようだ。