un deux droit

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効果も微温なおもてなし

市の施設に子どもを連れて行った。

受付で「お子さんのマスクはお持ちですか」と問われた。3歳以上の子どもはマスクを着用する決まりとのこと。

仕方がないので帰ろうとすると、警備員のじぃちゃんが「よかったらこれ使って」と子ども用マスクをポケットから取り出した。じぃちゃんの体温でホカホカになったマスク。一応ビニール袋には納められている。

すると受付のおねえさんが露骨に迷惑そうな顔をして静止しようと近づいてきた。しかし「ありがとう」と娘が受け取ってしまったのでその場はそれで収まった。じぃちゃんなりの好意は素直にありがたく受け取っておくもんだ。

その後、受付のおねえさんから「いただいたマスクはつけられなくていいので、次からはマスクのご持参をお願いします」と頭を下げられた。どうも着用していないものは入場するべからず、とまで厳しく決まっているわけではないようで、警備員のじぃちゃんから衛生状態の不明なマスクを付けさせることを強制したくはない、という意思が受け取れた。

じぃちゃんはじぃちゃんの立場でできる工夫を、おねえさんはおねえさんの立場でできる裁量を。どちらも行き届いた配慮を感じた。しかし「幼児の入場条件としてマスクの着用を求める」というルールがそもそも感染の現状と乖離しているのだけれど、「もういい加減よくないっすか」と判断する立場の人間に声を上げることはできないのだな、ということが少し哀しい。こうして目的を失った死骸のようなルールが堆積していくのだな。数万年後にその化石は誰も発掘してくれないぞ。