un deux droit

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いまだに抜けない北海道弁

北海道から離れて早10数年、もういい加減北海道弁からおさらばしたいと思っているのだが、年に数回発作のように口をついて出てしまうことがある。流石に「なまら〜べさ」のような言い回しは早々にさよならした。「したっけ」「なんも」など文頭につくものは比較的容易だった。「ザンギ」「サビオ」などの固有名詞はなかなか苦労したが克服した。「はんかくさい」「あづましくない」などそもそも使ったことも聞いたこともないものもある。

方言を抜くのが困難なのは「形容詞」「動詞」「方言だと認識していないもの」「幼少期しか使わないことば」「北海道の文化・風習・価値観に根付いたもの」のいずれかの要素が含まれている。

「形容詞」は感情の表出と一体化していることが多く、つい冷静さを欠いて口に出してしまう。困難だったものの例は「めんこい」「しゃっこい」などだ。

「動詞」は読んで字の如く日常の動きと連動しており身体に染み込んでいる感覚があり難しさを覚える。あと類似の動詞の言い換えが咄嗟に出てこないことも多く、違う動詞を使うときはニュアンスの差の気持ち悪さを隠しながら使っている。大阪の人が「なおす」を直せないのに近い。例としては「ちょす」「うるかす」などだ。

「方言だと認識していないもの」は他県の人から指摘されるまで気付く機会がそもそもないパターンだ。九州だと「離合」が辞書に載っている正式な単語だと思っている人も一定数いる。例としては「ぼっこ」など。

「幼少期しか使わないことば」とは主に大人が幼児にたいして使う単語のことで、自分が親になったときに何十年ぶりかにいきなり解凍・復元されて発話され、言った本人もビビるというやつだ。例としては「おっちゃんこして」など。

「北海道の文化・風習・価値観に根付いたもの」は自分のメンタリティが道民根性のままでつい使ってしまう言葉の言い回しだ。基本的に後ろ向き、悲観的、諦念、卑屈という要素が孕んでおり、これが一番抜けにくく、また妻からの評判も悪い。

というわけで本題。気をつけていてもなかなか抜けない表現10選を以下に紹介する。お題の「ハマる」とはニュアンスが異なるかもしないが、「深みに嵌る」の方だと受け止めてもらえれば幸いである。


あます

[意]残す
例:「それあますならちょうだい」

正確に言うならば「余らせる」のこと。
相手の計画性のなさを咎めるようなニュアンスがあり妻に不評。

記名章

[意]小学生が服の胸元につける名札

「きめいしょう」あるいは「きめいしょ」と発音する。しょ(う)の部分の漢字は「書」なのか「章」なのか「証」なのか確信が持てない。何せ道民の中でも一部の地域でしか使われない表現and小学校以降使わない単語なので私もごく最近知って衝撃を受けたくらいだ。

(手袋を)はく

[意]する、つける、はめる

ねー、なかなか直らないんですよねー。前足じゃないんだからと何度も笑われて来ましたがこれもしぶとい。多分頻出シーズンが冬季限定で、一般的な表現に馴れるチャンスが少ないためだと思う。南国だとさらに機会は少ない。かたや北海道は半年間くらいは手袋を「はいて」いるので刷り込まれた回数も多い。難敵。

ほっぺた

[意]頬

例「この赤ちゃんのほっぺたがたまらないね」
これは検証ができていない。が、どうも怪しい。
「ほっぺ」は通じる。でも、「ほっぺた」となると「た?」と言われる。

はたく

[意]叩く
例:「〇〇ちゃんのこと、はたいちゃだめ!」

端的にいうと平手打ちのこと。
「ひっぱたく」は通じるのに、強調の「ひっ」を除いた「はたく」だけだと方言扱いになるのは解せない。

上靴

[意]上履き

保育園で「上履きを持ってきてください」と言われて「北海道には上履きなかった」といったら「ほんとですか??」と担任に笑われた。調べるとあぁ上靴のことねと理解。

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でもいわゆる「コレ」は北海道ではなかった気がするんだ。室内でも外履きと同じ普通の靴。写真のものだと冬を越せない

よしかかる

[意]寄りかかる
例:「そこよしかかったら壊れるよ」

雰囲気で通じるが怪訝な顔をされる。

まかす

[意]こぼす
例:「あー、ほらもう牛乳まかして〜」

撒く、から転じているのだと思う。
どちらかと言うと「ぶちまける」ほうがニュアンスに近いか。

もらう

[意]受け取る
例:「その皿洗うからもらうよ」

方言かは怪しい。私個人あるいは家庭あるいは故郷の独特な用法かもしれない。
「いただく」のような謙った感じが出るので、いちいち卑屈な序列関係を感じさせるところが道民根性丸出しで不快とのこと。

馬鹿

[意]「ちょまてよ(キムタク風)」
これも私個人あるいは家庭あるいは故郷の独特な用法の可能性あり。
子どもが歩道から飛び出し車に轢かれそう、みたいなシチュエーションの時、咄嗟に口をついて出る。
相手を貶める意味はない。
"watch out!"から"shit!"まだ実に多様なシチュエーションを「馬鹿」の一語で済ましている。妻からは「語彙なさすぎ」「隊列や場の秩序を乱すことへの嫌悪感強すぎ」「よほど過酷な環境で育ったんだね」「とにかくこっちでは無闇に相手の自尊心を傷つけるから、禁句で」と厳命されている。今でも不意に「ばっ」まで出て寸止めに失敗しては白い眼で見られ続けている。


一通り眺めると、対子どものときに古い記憶が呼び起こされて昔馴染んだ言い回しが咄嗟に出ることが多い。また、メンタリティと紐づいた言い回しも多い。雪深く厳しい季節が一年の半数を占める北海道は、使われる言語にもその哀しい特性が深く刻まれている。と思う。
「それはあんたの家だけだ」という道民の異論反論を待ちたい。

はてなブログ10周年特別お題「私が◯◯にハマる10の理由