un deux droit

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魔性の女

昨日の早朝、学生時代に付き合っていた女性に復縁を迫られる夢を見て飛び起きた。こっちが子持ちの既婚者にも関わらず、だ。全部リセットしてやり直そう。いろいろ寄り道したけど結局私がよかったでしょう?と訳知り顔を見せる。ご名答だよ、君と一緒になったら間違いなく幸せだった。しかしそれは獣として。刹那的で衝動的な生き方を愛する私たちが生活を共にしていたら間違いなく社会的生活は破綻していた。互いにあるだけのお金を使い果たし、さしたる展望もなく気の赴くままに転職を繰り返し、毎夜浴びるほど酒を飲んで体を壊していたはずだ。互いの存在が己の理性的なストッパーを外すドラッグの役割を果たしていて、どこまでも快楽に溺れることができた。
今お互いに堅実だが退屈なパートナーと結ばれているのは賢明な判断だ。自制心の弱さをパートナーにアウトソーシングすることによってギリギリ社会人のフリをして生活していられるのだ。そうやって言い訳を積み重ねて最後の一線を踏みとどまったところで目覚めた。なんて虫のいい筋書きだろう。しかし実際にそういうことが起こりかねない女性ではあるのだ。

件の女性は婚姻はしているものの一度も同棲したことはなく遠距離婚を何年も続けている。子どももいない。そしてその制約のない立場を存分に活かして日本中を飛び回り、ときには海外に飛び出てフリーランスとして人生を楽しんでいる。
そして別れて15年以上経った今もなお近くまで仕事できた時は飲みに誘ってくる。私は酒が入ると理性を保つ自信がないので、旧友としてランチを楽しむだけにとどめている。それでも私の未練を把握した上でおちょくっているのか、自由な恋愛を謳歌しているエピソードをぶっ込んできて、劣情を巧みに掻き立ててくる。

私が急に夢見たのは久々にLINEが飛んできたからだろう。拠点を東京から大阪に移すので、ちょっと近くなった、大阪に出張の時は飲もうよという連絡。「あなたはいつか必ず私の元へ帰ってくる」という不吉な予言を払拭できないまま心の片隅を奪われたままの自分の情けなさを恨めしく思う。