un deux droit

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ちゃんと寝ろ

「だったら初めからそう言えばいいのに」
妻と結婚してから耳タコで聞いてきたセリフ。
私との会話が彼女の頭でうまく処理されず、補足の説明を加えると必ずこう切り返される。「話の受け手である私の言語処理能力には一般の不具合もないのだから、コミュニケーションが断絶した場合の原因はすべてあなたの発話のまずさにある」ということを、妻はいちいち伝えないと気が済まない。上の空で相手の話に集中していないことなんてままあるし、仮に100パー相手の話し方のまずさに問題があったとしても、マナーとして「主に私側の不手際のせいであなたのメッセージを受信し損ねた」という言い回しの表現を選ぶのが穏当な人間関係じゃないかと思うのだが、妻は必ず波風が立つ方の言い回しを選びたがる。このことは端的に迷惑だし、無駄な諍いを発生させるのでほとほと困っている。
私にだけならばまだしも、自分の母親や娘に対しても、「もっとわかりやすく言え」だの「その言い方じゃなんの話かわからない」だの、人の話し方にダメ出しばかりしている。妻に部下がいた時代は部下にも同じような詰め方をしているエピソードを本人から聞き、「本当に要領を得ない話し方をするのよ」と憤慨する妻をよそに、その部下の精神を案じたのだが、案の定彼女が受け持った部下は100パー退職している。私と結婚する前には年上の部下も辞めさせたことがあるようだ。こうなってくると、彼女と関わる人が軒並み言語運用能力の低い人間ばかりという奇妙な符号を認めねばなるまい。そんなわけはないので、端的に受信装置がイカれている方を疑った方が早い。
妻は高収入で英語とのバイリンガルだったりすることもあって知能が高いと思っていたのだが、思ったよりバカなのかもしれない。そんなことを疑い始めた。これくらいは掴んでくれよと言いたくなる文脈がことごとく掴めない。複雑な構文を嫌う。難しい単語を知らない。人の話を聞いていない。自分の好みの回答でないとすぐにへそを曲げる。仕事の質は高い。しかしコミュニケーションは取れない。その部分は減らず口と高圧的な態度と屁理屈のこねくり回しでねじ伏せるという力技でキャリアをのし上がってきたのだろうと思う。そう考えると少し憐れなことのようにも思う。よもや自分がコミュ障だとは妻は微塵も疑っていないだろう。でも周囲からは確実に煙たがられ、遠巻きにされているのだ。
そしてこれは邪推になるが、妻の症状は悪化していて、それは慢性的な睡眠不足によるものではないかと思っている。深夜2時ごろまで毎晩パソコン仕事をしながら海外ドラマに没頭している。その脳への負荷の蓄積が彼女の言語処理能力の低下に拍車をかけている。
私の知っている限りでは、ショートスリーパーを誇る人はえてしてコミュニケーションに難ありだ。本人は困ってなくても周囲が迷惑被っているので四の五の言わずに寝てほしい。妻に願うのはほんとそれだけ。私も睡眠不足には気をつけよう。