un deux droit

このブログには説明が書かれていません。

ゴーストライター

4月に控える、社長交代に伴う事業部再編の青写真を同期の男から聞いた。今期まではエリア制で支店長を据え、その下にメンバーが連なっていたが、来期からは機能別に事業部を立ち上げ、エリア横断の部署になるらしい。ウィズコロナの時代にふさわしい変革だと思う。
なぜその情報を彼が掴んでいるかというと、彼が事業部長のうちの1席を射止めることに成功したからだ。今は事業部長間でメンバーのドラフトをやっている最中らしい。それで彼が担う予定の経営企画部門に、私を加えたいと思っているんだ、という打ち明け話を本人からされたのだ。
現行の職務だと、そのまま行けば営業部門になるところなのだが、私は今期、営業部門に籍を置いたまま、同期のよしみということで彼が現在率いている広報やイベントの企画立案にもボランティアで協力している。私の執筆した原稿や立案した企画がそのまま彼の手柄となったので、来期以降もブレーンという名の体のいい使いっ走りとして抱えておきたいのだろうと思う。
私の仕事の見せ方のまずさもあるのだろうが、エリア横断でプロジェクトを連携していく時、それを評価する人間から物理的に距離があると不利だなぁとしみじみ思う。福岡で生活していることの唯一のデメリットかもしれない。これまでも本社のメンバーと連携するプロジェクトは何度かやってきたが、アイディアだけ都合よく吸い上げられて、報告や根回しなど目に見える内向きの動きは本社メンバーが首尾よく固め、期末にポストを貰っていた。まるで昇格請負人。これまでプロジェクトでタッグを組んだパートナーは10年間で4人いるが皆管理職として羽ばたいていった。うち3人はその後伸び悩んだりチョンボを繰り返して低迷しているので、まぁゲタを脱いだらそんなもんよなと一人冷笑している。やっぱ育休2回とったのが心証悪いんだろな。役員の1人が未だに目の敵にしてくるから彼が死ぬまで冷や飯食いなのだろう。家庭の安寧は私のキャリアという尊い犠牲の上に成り立つ。
私が昇格を請け負った残りの1人である同期の男は飛躍後も私を抱え込もうとしているのでその点強かだなと思う。今回の登用は20人抜きくらいの大抜擢だ。寝首をかかれないよう自分の等身大の実力を見極めて、足場固めを進めているのだ。せっかくだから私の地位の引き上げもセットでやって欲しいなぁ。課長職にあてがうくらいの権限はもらえると思うけど。
いずれにせよ、彼の部門に行けば営業の職務からは距離を置くことになる。私の名前と紐づかない形で私の書いた文章が社内外で評価される機会が今期も何度かあったのだが、それが思いのほかやりがいになっている。報酬に反映されなくとも、心の充足のために時間を費やせることは望外の幸せ。同期の出世頭を隠れ蓑にして悠々自適な生活を送ろうと思う。