un deux droit

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奥田英朗「罪の轍」

映画化されたやつとタイトル似てるけど別作品。
奥田英朗は年々作品数が減っていて、本人はもう才能が枯れたなんて嘯いているが、久々に新作(と言っても去年だけど)を出してくれた。
奥田英郎の話は分かりやすくはない。もっと簡潔な展開だったり、人物描写をした方がのめり込める人も多い筈だ。けれどもあえてそうしない。人によっては冗長に感じたり、矛盾が気になり興が削がれると思う。でも私はその話の筋の不恰好さがかえってリアルに感じて好き。
結末は唐突に訪れ、また救いのない話なのだが、現実にあった事件を下地にしていることを読後に知った。東京オリンピック前夜の空気感も生々しく感じられた。
物語最初の舞台である礼文島は両親が好きで幼少期に何度か訪れたことがある。全ての色が薄く、寂寥感に包まれた描写も懐かしい。