un deux droit

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寮生ネタは時に笑えない

セミナー講師として出向いた客先で、大学の1年先輩に遭遇した。互いに面識はなかったが、私の自己紹介の内容から類推して感づいたらしい。
「あんどうさんって、〇〇出身ですよね?」
上の〇〇には大学名ではなく、とある寮の名前が入る。
私はかつて大学寮の寮長をしており、そのエピソードをかいつまんで話したらまさかの同窓がいた、というオチだ。寮や寮生の実物を見たことがない人には面白おかしいエピソードとして適当に脚色して伝えればまぁまぁウケのいいつかみになるし、組織論やリーダーシップの話題にもつなげやすい。母校から現在地まで2000km(適当)くらい離れているので、元ネタがバレることはまずないと高を括っていたらまさかの大当たりを引いてしまった、というわけだ。
実を言うと私の在籍していた寮は、在学生の中ではかなり悪名高い存在だ。少なくない数の寮生が奇怪で不潔な格好で学内をうろつく、夜中まで騒音、留年生の巣窟、低俗なイベントの数々、後を絶たない新入生の退寮者…。まぁ控えめに言って汚物である。キャンパスライフを堪能したい寮生は寮生の身分を全力で隠す。教授陣からは本学の品位を著しく損ねる存在として目の敵にされ、幾度と無く廃寮の圧力をかけられながらも、ゴキブリの如くしぶとく生き残っている自治寮だ。その出身者とバレては社会人としての信用度は限りなくゼロに近づく。
そして間の悪いことに、この研修以降の教育担当がその先輩に変わるとのこと。あらかじめその情報を掴んでいたら、絶対に寮のことは自己紹介に混ぜなかったのに…。この研修がこの会社との最後の仕事かもしれない…
その節は大変ご迷惑おかけしました…なんとか受け答えを絞り出してそそくさと講演席に戻った。その後もなんとかセミナーはやり切ったものの、偉そうに喋る私の姿を捉えている先輩の目が「私はあなたの本性を全て知っているよ」と物語っているように思えて気が気ではなかった。…これからは受講者に母校出身者がいないかあらかじめ確認しよう。そう心に誓った。