un deux droit

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仕事を舐めていいことはない

約10年前、社会人になりたての自分は完全に仕事を舐めていた。

そもそも働くとはなんぞや、ということすらまともに考えてもいなかったし、仕事を通じて何かを成し遂げたい、という思いは微塵もなかった。

そのため、「弊社でどのような仕事をしたいですか」という類の質問を面接でする企業は軒並み落ち、最終面接まで運良くその質問をせず内定を出してくれた最初の会社で私は就活をやめ、あっさりと入社することを決めた。様々な業界にそれぞれもっともらしい志望動機を並べ立てて内定先を収集するような輩のことは軽蔑していた。ペテン師め。俺は1度も自分の本心(仕事を通じて実現したいことは特にない)に嘘をつかずに内定を取ったぞ、と。

ただ、与えられたミッションを人よりは巧くこなすだろう、という要領の良さだけは根拠のない自信を持っていた。

最初に与えられたミッションは飛び込み営業。人手が足りず精査のされていない顧客未満リストを配られて駆けずり回った。いきなり非人道的な仕事の降られ方にショックを受ける同期もいたが、仕事になんの期待もなかった私は、まじでこういうことする会社あるんだな、と未経験の世界にワクワクしていた。会社の金で首都圏を歩き回り、世の中には実にいろんな会社があるんだなと半分社会科見学、半分遊びの気持ちでその期間を楽しんだ。途中、日本電気という会社がリストにあって、なんだこの舐めた会社名は、と思って川崎に向かって面食らったこともいい思い出だ。知らない人はググってほしい。

プライベートの用事は何もなかったので飲み会と聞けば全て参加し、週末はカラオケでオールして毎度午前様だった。給料は毎月大体使い切っていた。頼んでもいないのに毎月勝手に20万ほど自動で振り込まれる生活には感謝しかなかった。先輩はどの人も優しく親切で仕事ができると無邪気に信じ込んで日々を過ごしていた。なんの品定めもなくしっぽを振ってくる私の存在は、さぞかし可愛かったろう。

転機が訪れたのは入社しておよそ半年後、同期の1人が大型受注を提げて帰社してきた。食い詰めた先輩社員が少しでも関わった痕跡を残しておこぼれを頂戴しようとハイエナのように群がった。その受注を皮切りに、その同期は順調に案件を積み上げていった。

私はその事実に酷く傷ついた。一斉にスタートを切ってこんなにも差がつくものか。自分はその1人のチート同期を除いた他の同期と同じくらいの実績で、それは過去の先輩達の実績と比べても特に劣っているわけではなかったが、劣等感を抱かずにはおれなかった。努力を怠っていたとも思えないし、商品知識も入っている。商談のデモンストレーションをして先輩社員から改善を促される欠点もない。むしろ一つ上の代のレベルには既に到達していた。チート同期とも遜色ない。なのに結果がついてこない。

それから半年は地獄。なんとか結果を出そうと悪あがきをして自滅した。望みの薄い顧客にしつこくアタックしてクレームになったり、商談で顧客の希望と財布を考慮しない自分本位の提案を仕掛けて失注したり。完全にペースが乱れてしまった。その後本配属でチート同期だけが東京の花形場所に配属され、私含めその他の同期たちは例年同様各々地方に散っていった。

それからかなり時間が経って、冷静に同時を振り返って思うのは、ビジネスの世界にフェアなど一つもないということ。チート同期のエリアは他の同期とは明らかに有望顧客が偏っていた。一発リセマラ終了レベル。私の担当は即リセマラのクソエリアだった。それは2020年現在に至っても私の担当したエリアはペンペン草一つ生えていない不毛地帯であることから明白だ。成果と私の能力とは無関係で、私の努力が無駄であったことは時間が証明してくれた。

営業職が無慈悲だなと思うのは、前年度実績を考慮してエリアの再配分が行われること。つまり成果を出した営業はより成果の期待値が大きいエリアへ、成果が出せなかった営業は成果の期待値が低いエリアへシフトしていく。最初の入力値の些細な差が年度を追うごとに複利で膨らんでいく様は圧巻である。賢明な企業であればいろんなタイプのエリアを営業に経験させて、成果が果たしてエリアの特性なのか営業個人の特性なのか慎重に吟味するはずだが、余裕のない中小企業は目先の利益が大切なのでそんな配慮はない。なので、そういう会社に入って一年目に当たりを引けなかったら躊躇なく辞めたほうがいい。良くも悪くも人を適切に評価する機能が存在しないから、最初に当たりを引ければずっといい思いができるし、逆もまた然りなのだ。

一方でそれと反対のことも思う。いい思いをすることが仕事の目的なのか。ちやほやされて高い給料をもらって地位を築く。綺麗事かもしれないけれど、それはあくまで結果であって目的にするもんじゃないなと思う。そういう意味においては、やはり仕事を通じて実現したいものがなんなのか、キャリアのはじめに内省する苦痛を避けてはいけなかったということを反省している。先ほど言った通り、ビジネスの世界は全くフェアではない。成果を出すには運もかなり必要だし、組織運営は私欲が渦巻き全く合理性に欠ける。だから自分が与えられた業務に従事する上で、揺るがないポリシー、目指すビジョンを持っていないと周囲のノイズに翻弄されて簡単に座礁する。私は仕事を通じて表現する自分の生き様を定めるのに時間がかかり、ずいぶん無駄足を踏んだ気がする。しかしそれは社会に踏み入る時に自分が横着したつけであって、その生き様を定めるまで文句も言わず給料を払い続けてくれた会社にはやはり感謝している。

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