un deux droit

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色気のない美人

今週のお題「下書き供養」


我が社にはとても残念な美人がいる。

入社以来ずっと会社の看板娘で、スタイル抜群。美人なだけでなく愛嬌もあり、ルックスに頼らない仕事への情熱と献身的な努力もあってお客様の覚えがめでたく、女性の後輩社員から常に憧れの存在としてもてはやされてきた。かといって完璧人間ではなく、おっちょこちょいな業務遂行や笑える程度の非常識、お酒が入った時のだらしなさなど適度に間が抜けていて、その隙が男性にもウケが良く可愛がられてきた。

そんな彼女も今年で35になる。

初めて会ってから10年が経つが未だ美貌は衰えず、それでいて美貌のキープに対する必死さも感じさせない。それはそれで凄みを感じる。

しかし何故だろう、グッとくるものがない。ほとんど完璧なのに、劣情を駆り立てる要素だけがすっぽり欠落しているのだ。

私は今携わっているプロジェクトの関係で、仕事終わりにその彼女とサシで飯を食いに行くことがある。酒が絡んで、くだらない世間話に一盛り上がりして、さてそろそろ解散するか、と財布を取り出した時になって初めて、そういえばめちゃくちゃ美人を連れ歩いているんだったという客観的事実を思い出す。高揚感などまるでなく、野郎と飲んでるのとなんら変わらない、100パーセント素の状態。股間は全く疼かない。仕事上の関係とはいえ、これ程まで完璧に相手の女性性を意識しないでいられていることに、自身の別の病気の可能性すら疑ってしまう。

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ここまで書いたのが2019年10月。

以下、追記。

2021年になっても、彼女は相変わらず美しく、結婚願望を漏らしながらも未婚で、そしてこの春、とうとう部長職まで上り詰めた。

結局途中で書くのを挫折したのは、大した結論がないためだった。

凡人が結婚願望を抱くには気後れする程度の美貌を持ち合わせて入るものの、一般人の域はギリギリ出ない、ものすごく中途半端なところに位置しており、一流の男たちを振り向かせる女性陣との勝負には勝てない。おそらく知性や人間性の部分がほんの少しだけ不足している。

そのくせプライドのために本人の願望と現実とのギャップが常にあり、その不満が言葉や態度の端々に滲み出ている。その気位の高さに男は冷めるのだと思う。それが色気の無さとして顕れる。眼中にねーよ感を常に纏っている。ただそれだけだ。

かつては全女性社員の憧れの的たった彼女が、次第に神経質なお局になっていく様を見続けるのは心苦しい。幸せな人生を手にするというのは本当に難しいことだとつくづく感じる。人生というのは、持って生まれた人に勝る部分への拘りを捨てた時に、初めて幸せを手にするという面倒くさい仕様になっているからだ。ちなみに証拠はない。