un deux droit

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『普通の投資』を始めるところだった

昨日久々にchikirinの日記を開けた。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/touch/20180810

一通り読んだ後に自分の親指は、検索窓に『ネット証券 おすすめ』と入力していた。

とりあえずランキング1位のSBI証券のページを開き、口座の開設方法を調べたところ、マイナンバーの提示が必要なことがわかり、この段階で少し面倒臭くなり一旦保留にした。

その後、本棚に放置されていた森博嗣の『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』が目に留まり、ページを開いて見た。

読み進めるうちに、『無料で配信されているものの大部分は、それだけの対価が得られる何者かが流している、と考えたほうが無難だ』という一行に目が止まった。

そこで一旦本を置き、もう一度chikirinの日記にアクセスし、エントリを読み直してみる。

氏が言っていることは、普通の投資をする人が少なすぎるということ、貯金をするならば半分は投資に回すべきだということ、投資するならこの手順でというハウツーと、投資で得られるメリットだ。

氏は煽るのが上手なので読めば読むほど投資をやらなきゃそんな気になってくるが、投資が確実に資産を形成できるとは一言も書いていない。もちろん貯金だって日本円の価値が暴落するリスクから無防備だから、貯金が絶対的に安心なわけではないのだが、資産形成法として投資が貯金よりすべての面で優れているわけではない。(もちろん氏もそんなことは言っていない。言っているように読めるが言っていない。)

ここまでをまとめると、実質的に言っているのは資産を分散管理した方がリスクヘッジできますよってことくらいだ。

ここからchikirin氏の本領が発揮される。

別のメリットを見せて論点をずらす技だ。具体的には、

1)社会と市場について学べ、視野が拡がる

2)自分の投資性格が理解できる

3)リスクをとることの意味がわかる

の3つだ。

どれも大半の人にとって魅力的に映るメリットに思えるが、どれも確実に資産を増やすことを保証するものではない。エントリを読み始めた当初は自分もただ単に金を増やしたいなと思っていたのにいつの間にか投資を通じて人生経験を積みたいなって気持ちにスライドさせられていくのだ。


私に限って言えば、もちろん金はあるに越したことはないが、金を増やすためにあれこれ頭を働かせたり、時間を割かれることがそれ以上に苦痛なので投資はやらない。

氏の掲げるメリットも、よくよく考えたらそんなに得たいものでもない。社会の仕組みなんか言うほど興味もなければ、自分の性格もリスクをとることの意味も知りたくはない。何より、これが一番大事なことだが、金が無くて今はできないが、金があったらしたいこと、欲しいもの、というのがない。

漠然とした将来への不安はもちろんあるが、それが投資に手を出すことによって和らぐことはないし、むしろ余計に具体的な課題として生活の内部に侵食されるだろう。私は、自分自身の人生の金銭的な損得をいちいち考えながら行動を決定し続けるような人生を送りたくないのだ。そういう意味では自分自身の利己的な性格という負債をこれ以上蓄積しないために、金銭的な投資をしない、という選択をしているとも言える。

何もしない言い訳だと言われたらそれまでだが、あまり多くのことに惑わされず心穏やかに過ごすことが案外得難いことだと思ってこの頃は暮らしている。